服飾評論家・出石尚三さんが
男の美学をダンディーに語ります

第970回
唐がらしジャムの作り方

唐がらしのジャムはお好きですか。
色は深いルビーのようで、
少し口に含むと辛くて、甘い。
イタリアではごく一般的な常備食材のひとつです。
“マルメラータ・ディ・ペペロンチーニ”。
文字通り「唐がらしジャム」と呼ばれるものです。

この間、友人に
この“マルメラータ・ディ・ペペロンチーニ”を
ひと壜差上げたところ、ことのほか好評で、
「もうひと壜下さい」と
リクエストされてしまったのです。

唐がらしの粉を
砂糖で煮つめるだけのことですから、
簡単ですし、要領としては
他の様ざまなジャムの作り方とまったく同じ。
ただし唐がらしにペクチンは含まれていないので、
適度なとろみが出てこない。
そこですりおろしたりんごを使います。
というよりも最初は
鍋の中にすりおろしたりんごと砂糖を入れて
ゆっくりと火にかける。
頃合いを見はからって、
唐がらしの粉を加えて、丁寧にかきまぜる。
あとは好みのとろみが生まれるのを
待つだけのことです。

もちろん好みによって
コニャックやラム、ウイスキーなどを少量
香りづけとして加える方法もあるでしょう。
清潔な壜に入れて保存すれば
永く保つこと、他のジャムと同様です。

さて、この“マルメラータ・ディ・ペペロンチーニ”が
どんな時に活躍するか。
チーズに少しつけて食べると、最高です。
ことにペコリーノ(ヒツジ乳のチーズ)を
食べる時に添えるのは、
おきまりのようになっています。
味わいと言い、色彩と言い、
チーズとジャムがひとつに結ばれる瞬間
という感じさえします。

言うまでもなく
これはジャムの一種であり、嗜好品ですから、
チーズ以外には使えないわけではありません。
たとえばトーストに
そのままつけて食べる人もいるようです。
あるいは各種ソースを作る時、
隠し味として少量加えると、
いっそう味が深まることがあります。
「甘いけれど、辛い」。
これを“ドルチェ・フォルテ”と言うのだそうです。
私たちも時に甘く、
時に辛い人間でありたいではありませんか。


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