虎ノ門漢方堂店主・城戸克治さんの
やさしい漢方の話

第140回
「いくちゃん、安らかに・・・」

小学4年生の娘から
「いくちゃんが死んだ」という電話が、
夕方、薬局の方にかかってきました。
しかし、だれかが死んだというわりには、
子供は泣いてもいないし声も割合に元気です。

また学校で飼っている
ウサギかメダカか、
テレビ漫画の登場人物かが死んだのかと思い、
そのまま黙っていましたら、
子供のほうから「じゃあ、またね」
といって電話を切ってしまいました。

仕事が終わって家に帰ると、
子供は学校の制服を着たままでした。
「どうしたのか」と妻に聞くと、
二人でお通夜に行ってきたということです。
亡くなったのは同じ学年の男の子で、
入院する前の日には
校長先生のところへ行き
「頑張ってくる」と元気に言っていたそうですが、
手術の後、二度と目を覚ますことなく、
そのまま逝ってしまったのだという話です。

式場には、
「いくちゃん、安らかに眠って」
とチョコレートで書かれた白いケーキと、
いくちゃんが大好きだったオモチャ、
子供たちが心を込めて折った千羽鶴、
お参りに来た子供たちが
「いくちゃんへの思い」を綴るノートが
置かれており、子供たちは
彼への最後の思いを
そこに一生懸命に書いていたそうです。

帰ってからも、娘は
「いくちゃんからポップコーンをもらったことも、
ノートに書けばよかった」とか、
「もっと、いくちゃんとの思い出を
作っておけばよかった」とか、
お風呂に入っても
「いくちゃんは、可哀想に
もうお風呂にも入れないのね」と話し、
初めて経験する
友だちとの永遠の別れの悲しさを
子供なりに随分と感じていたようでした。

もうすぐ楽しいクリスマスだというのに、
まだ10才になったばかりなのに、
いくちゃんは二度と目を覚ますことなく
たった一人で天国へと旅立ってしまいました。

身体は丈夫でなかったけれども
一生懸命に頑張って
明るく生きてきた「いくちゃん」のために、
今の私にできることといえば
学校の子供たちと一緒に
彼の冥福を祈ってあげることしかありません。

中医学では、狭心症や
心筋梗塞などの後天的な心疾患には
いろいろと有効な漢方薬が開発されていますが、
先天的な心疾患の研究に対しては
残念ながらそれほど力が注がれておりません。
しかし、このような悲しみを
少しでも繰り返さなくてすむように、
私たちはこの分野の研究にも
もっと目を向けて行かなければならない
ということを、いま痛切に感じているところです。


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