虎ノ門漢方堂店主・城戸克治さんの
やさしい漢方の話

第139回
「失楽園」、あの有名人も・・・

女性は妊娠した場合、
お腹の中にいる赤ちゃんにも
栄養を送らなくてはいけないため、
貧血気味になることが多いものです。
こんなとき、西洋医学では
貧血の治療をすぐに考えがちですが、
中医学では少し違った見方をしています。

例えば、妊娠時の貧血の場合、
西洋医学では
赤血球数・ヘモグロビン濃度・
ヘマトクリット値などの
血液に関する検査値が低くなっていないかを
主に調べるのですが、
中医学では
それらの濃度が少々低くても
身体全体の血液の量が十分にあれば
それほど問題には致しません。

何故なら、妊娠後期に
貧血になりやすいということや
むくみが出てきやすいということには、
中医学的に見て
大切な理由があると考えているからです。
つまり、あらかじめ
体内の水分量を増やしておくことで、
お産の時に出血しても
大丈夫なように身体を調整しているわけです。
そのため、出血の量が多少増えても、
血液がうすくなっているので
血液中の赤血球・白血球・血小板などの
重要な成分が大量に失われることはありません。

また、血液が薄いということは
血液がサラサラということでもあり、
出産の後に発生しやすい血栓症を
起こりにくくするという利点もあります。

このように、妊娠の場合の貧血は、
病院で検査して
早急に治療する必要のない程度のものなら、
そのまま様子を見てもよい
というのが中医学的な考え方なのです。

確か、「失楽園」で有名な
渡辺淳一さんのデビュー作の小説でも、
女性が男性に比べて
出血に対していかに強いということが
重要なテーマになっていたと記憶しています。


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