虎ノ門漢方堂店主・城戸克治さんの
やさしい漢方の話

第267回
「中医学の悪い癖」

海水の中でも淡水の中でも、
魚は死ぬと水の中から
水の上へポッカリと浮き上がってきます。
しかし、魚は死んだように眠っていても、
生きていれば余程のことがない限り
水の上へと浮かび上がることはありません。

また、海やプールで泳ぐとき、
リラックスして身体の力を抜けば
身体も浮きやすくなり、
かなり遠くまで泳ぐことができます。
しかし、反対に緊張して
身体に力を込め過ぎてしまうと、
身体は石のように重たくなってしまい
遠くまでうまく泳ぐことができなくなります。

前者の場合も後者の場合も
体重が増減しているわけでもないのに、
なぜか身体が浮いたり
逆に沈んだりしてしまいます。
現在の科学の知識からすれば
比重と浮力の関係で
簡単に説明がつく話なのですが、
そういった知識のなかった時代の人たちは、
こうした説明がつかない現象の多くに
何か特別な力が働いているというふうに考えました。

中医学の場合、そのような特別な力を
「気」という言葉を使ってまとめ上げたのですが、
いつのまにか観念論中心の考え方に
凝り固まってしまい、
検証を怠る悪い癖が逆についてしまいました。

例えば、正確な人体の解剖図である
「ターヘルアナトミア」が西洋で出版されたのは
今から350年以上も前のことでしたが、
中医学ではついに
人体の正確な解剖図が作られることはなく、
カワウソなどの小動物を使った解剖図が
近代に至るまでの長い間、
人間のものとしてまかり通っていた事実があります。


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