昨今のこうした動きを見ていると、私にもし成功とおぼしきことがあったとしたら、それは「金銭ブームと抱き合わせでうまくジャーナリズムに乗って」虚名を博したことくらいなものであろう。一人の人間として、また「お金儲けの神様」にふさわしい財産家として成功したことにはどう考えてもなりそうにない。きくところによると、アメリカでも最近は経営者の間で占いが大流行しているそうだが、中国人の間では昔から四柱推命をはじめ、手相、人相、骨相、ソロバン相などなどありとあらゆる占いが盛んである。台湾の新聞を見ていると、「邱永漢の台北事務所を覗くと、董事長室(会長室)が西北の隅にあって位置が悪い。日本で名声の高いこの経済の専門家が台湾で十指にあまる企業を興しながら、一向にパッとしないのはこのせいである」などと書いてある。いつ私のオフィスの中に入り込んできたのだろうかとこちらがびっくりしてしまうが、人生には浮沈はつきものだから、こんな風に言われたら気にする人も多いに違いない。
私と台湾政府との間には長く不和の状態が続いたので、長い間、故郷の土を踏まなかったが、昭和四十七年、台湾政府が国連を脱退した翌年に、三回ほどずいぶん帰国を促すお使いの人が見えて、二十四年ぶりに故郷へ戻った。当時、台湾中の新聞が一週間にわたって大々的に私の帰省を報道したので、私の名前は全島にあまねく知れ渡ったが、そのとき私に面会を申し込んだ人々の中には占いを専門とする人も何人かいた。その中の一人が私の人相と生年月日を見てこう言った。
「あなたは、私たちの間でも知らない人がいないほど、著名な資産家ですが、私の判断では、実より名のほうが先行しているようですね」
「全くおっしゃるとおりです。あなたの占いは本当によくあたっていますよ」
と私はすぐに合槌を打った。私のようにジャーナリズムでよくお金の話をしていると、世間の人はあの人はお金持ちに違いないとすぐにも錯覚をしてしまう。お金の話をすることと、お金を持っていることとは全く別のことであると私は思うのだが、そんなことは一切無視されてしまう。
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