私がそういう具合に思うようになったのは、もちろん、私が自分のやりたいことを何でも思う存分やってきたからである。失敗に懲りもせず、常に新しいことに挑戦をしてきたからである。もし私が一業に徹して同じことだけをやっているのなら、多分、私は一回の失敗に教えられて、次からはもうあまり失敗しなくてすんでいたであろう。
幸か不幸か、私は一つの仕事に成功すると、もうそのことに嫌気がさして、また新しいことをはじめるので、性懲りもなくまた失敗をくりかえす。何回も失敗をくりかえしてバカじゃないかと笑われるかもしれないが、今まで経験したことのない新しい失敗だから、失敗そのものに新鮮さがあるのである。
私が最初に経験した失敗は、多分、二十四歳のときに私が香港に亡命するきっかけとなったいくつかの賭けに敗れたときではないかと思う。私が東大経済学部を卒業したのは昭和二十年九月末、ちょうど終戦の直後であった。日台航路も途絶えたままで、故郷へ帰ろうにも帰れなかったので、私はそのまま大学院に残った。専攻は財政金融であった。
当時の私はまだ学者になる気持ちを持っていたので、せっせと経済学部の研究室にかよったが、やがて帰還する日本人を運搬するために、沈み損ないの老朽船が動くようになったので、私は引き揚げ船を逆に乗って生まれ故郷の台湾へ帰った。
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