倍々ゲームで金が儲かる
相手の説明を聞きながら、私は心の中で、しめた、と叫んでいた。
もし郵便小包にして正規のルートで物を送ることができるのなら、何も密輸の船に積み込んで危ない橋を渡ることはないじゃないか。一回の量は少ないかもしれないが、送り先を分散して数多く送り、それを丹念に集めれば、確実な商売ができる。宛て先は、幸い学生時代の友人もたくさんいるし、親戚もたくさん住んでいる。とにかくうまく郵便小包が到達してくれるかどうか実際に送ってみることだ。
私は密輸船に託して荷物を送ることをやめて、郵便小包をつくり、東京に住む私の親戚宛てに発送してみた。約三週間後に、小包が無事ついた旨の返事がきた。私は俄かに元気づいた。一個僅か一万円程度の小さな荷物だが、九龍の郵便局へもって行って送り出すと二、三週間後には東京に届く。東京でそれが二万円に売れる。としたら、五十個送れば五十万円の儲けになる。月に百個送れば、百万円だ。
もちろん、私にはそれだけの資本がなかったから、すぐにそれだけのスケールで仕事をすすめるわけにはいかなかった。しかし、お金になることなら資本を出してくれる人はいくらでも出てくる。
私が声をかけたら、台湾から香港に留学にきていた若者たちも、すぐ貯金通帳からお金をおろして出資をしてくれたし、私自身、物が売れてお金が返ってくると、またそれを全部投じて倍の数量にして送り出した。
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