香港にさよなら
東京にいる友人が、
「一つ腕だめしにオール新人杯に応募してみてはどうですか」
とすすめるので、そのおだてにのって、香港から小説を書いて投稿したところ、好運にも応募作品九百何十篇あったうちの最後の五篇に残った。「竜福物語」(のちに改題して「華僑」)と題したその作品は、審査員五人のうち、尾崎士郎さんと小山いと子さんだけが強力に推してくれたが、衆寡敵せずして落選してしまった。
しかし、はじめて応募した作品が下読みを通過して最後の候補作品に残ったということは、ただでさえ自信過剰の私に「もしかしたらプロの小説家になれるかも知れんぞ」という夢を持たせることになった。
たまたま誕生したばかりの長女の首すじに紅い痣ができ、それがやぶれて化膿をした。香港でペニシリンを何十本も打ったり、ラジウムの治療を受けたが、香港の医者から「香港の医者はお金儲けには興味があるが、痣にはあまり興味がないから、日本へ連れて行かれたらどうですか」とアドバイスを受けた。
姉にきいてもらったところ、駒沢にある第二国立病院の放射線科がその道のエキスパートで、「連れて来たら診てあげましょう」と言われた。
私は私で、もしかしたら、この機会に小説家に転業できるのではないかと、ひそかに起死回生の策を練った。
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