エネルギー革命のもたらす変化
「日本経済新聞社の人が僕にね」と吉村さんは初対面の私に言った。
「科学技術のことをこれだけ知っているのだから、このうえ経済のことがわかれば、鬼に金棒、少し経済の勉強でもしたらどうですかといって、経済学の本を貸してくれたのですよ。せっかくのご好意だからと思って読んでみたんですが、経済学というのはおそろしく難しい学問ですね。いくら読んでも何のことだかさっぱりわからない。何しろ難解な用語が多いし、四苦八苦して読みましたが、読んでいるうちに一つだけわかりました。余剰価値と盛んに出てくるのを何かと思ってよくよく考えてみたら、儲けのことなんですね」
これには私も思わず破顔一笑してしまった。私は、これからきくことにいちいち経済的な解釈をしていただかなくとも結構ですから、科学技術者の立場で答えてくださいと前置きをして、
「エネルギー革命という言葉をこの頃、盛んにききますが、石炭から石油の時代になるというのは本当ですか?」
ときいた。まだ戦後、高額所得者のトップに石炭王たちが名を連ねていたイメージが強烈に残っていた昭和三十年代のことである。溶鉱炉をはじめ、製陶用の窯もセメント用のキールもすべて石炭を使っていた時代のことである。
吉村さんは私の質問に対して少しのためらいもなく、
「おっしゃるとおりです。石炭よりは石油、石油よりは天然ガスの時代になります」
「天然ガスというと、新潟あたりで採掘をして地盤沈下をきたして社会問題になっているあの天然ガスのことですか?」
「あれも天然ガスですが、僕の言うのは、アラビアあたりで、石油を採掘するときに、石油の上部にあって、採掘の邪魔になっているガスのことです。ほら雑誌のグラビアに油田から焔が立っている写真がよく載っているでしょう。あれは化学成分が石炭や石油とほぼ同じで
すから、将来はあれを使うようになると思いますよ」
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