美術雑誌で成功
私は『話の特集』から直接、果実を摘みとる幸運には恵まれなかったが、その手法を次に手がけた美術雑誌『求美』に応用して、美術ブームに一役買った。
高度成長も頂点に近づくにつれて、土地や株式に対する投資熱は遂に宝石や美術品にまで波及する勢いを見せてきた。画廊に人がつめかけるようになり、絵を買う人が急増してきた。私もその中の一人であるが、しかしどこの画廊に行っても、展示している絵の下にまだ値段は表示されていなかった。また『みづゑ』とか、『芸術新潮』とか、『芸術生活』といった美術専門誌があったが、絵画を財産とみなして、その財産価値を問題にする美術誌はまだ現われていなかった。
そこで私は『求美』という季刊誌を創刊し、最初の一年は美校出身でアートディレクターをしていた友人の足立淳さんに編集長をやってもらい、二年目からはサンケイ出身の中野稔さんにかわってもらって、雑誌に「誌上展」というページを設け、絵と作者紹介のほかに、その絵の売値も刷り込むという思い切ったやり方をした。
誌上展は、忙しくて個展を見に行くひまもない美術愛好家たちに好評を得た。医者や社長たちは、自分の診療室やら社長室から画廊に電話をし、雑誌に掲載された絵か、同じ作者の別の絵を注文してくれたので、画商たちは、広告費を雑誌に払っても十分、採算がとれた。
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