どうやら本人は私から一億円だましとって三千万円の土地でツーぺーにすればよいという考えだったらしく、これまでもそういうやり方で示談にしては刑罰を逃れてきたフシがある。
しかし、私にしてみれば、一億円のうち自分の出資は二千万円にすぎず、八千万円は信用されて集めたお金であったから、その後、返済をするのにずいぶん苦労をした。人のお金を集めて事業をやるとわかることだが、ひっかかったとわかった途端に大へんな剣幕で、借金取りのようなセリフを述べ立てる者もあれば、まあ、いいですよ、片づいたら通知してください、と至って鷹揚な人もある。
あとできいてみると、日本で粒々辛苦してお金のできた華僑の人たちで、台湾へ帰ってきて、ペテン師にひっかかったのは数えきれないほどいるそうである。私の場合、自分が資本を出して、儲かったら半分わけにしようという寛大な条件を出したのだから、ありがたいと思って誰でも一生懸命頑張るだろうと安心していたのだが、人間の心のすっかりすさんでしまった台湾では、人のお金を持って逃げたほうが手っ取り早いと考える人が、うんと多くなっている。
そういう連中に身ぐるみ剥がされて、泣くに泣けず、訴えるに訴えられず、悔し涙に暮れて引き揚げる華僑がたくさんいるそうである。
だから海外投資はやめておいたほうがよいと言っているわけではない。また現地人だけが悪くて日本人は常に被害者にまわっているということでもない。
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