ところが、官僚の権限の強い台湾では、それぞれの部署の役人たちが勝手な弁解をするだけで、輸入をストップする気配はどこにも見られない。現実に損に耐えかねた零細業者から倒産ははじまった。
私はすっかりあわてた。三百頭の牛に月三百万円ずつ食われたのでは、愚図愚図しているうちにこちらが食い倒されてしまう。もう一刻も待ってはいられない。
私はすぐ担当者を呼んでいくらでもよいから叩き売ってくるように指令をした。飼料を納入してくれていた農民の一人が、いくら何でもこんな不条理な状態が長く続くわけがない。牛の代金は半分、現金で払うが、残りは二回の分割払いにしてくれないか。それでよければ自分が引受けると申し出てきた。私はその場でその申し出に応じ、牛を全部運んで行ってもらった。一日十万円、食べられるのを食いとめるだけでもよいと気があせったのであった。
まず飼料代の流出を食いとめた。続いて二回目の代金は支払ってもらったが、最後の分はとうとう貰いそこなった。最後の分を払う前にその人は田畑を売っても牛どもの食欲には勝てず、とうとう夜逃げをしてしまったからである。
しかし私は、私の代わりに牛に食い倒された本人に感謝の意を表しこそすれ、恨みは抱かなかった。だから代金のそれ以上の取り立てもあえてしなかった。私の牧場道楽の代価は締めて四千万円。その分を私は出資者の一人一人に返済しておしまいにした。
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