なかでも一番性の悪かったのは、総経理だった男で、自分も会社の業績を左前にしたことについては責任があるのに、辞めるにあたって退職金を要求したばかりでなく、自分の持株を私に、額面で買ってくれるように申し入れてきた。それも調査局の人を通じて、私が断りきれない手段に訴えたので、私はかなり腹を立てたが、これも癌を取り除く手術だと思って、その要求をすべて容認した。
次いで、副総経理を総経理に昇格させ、ともかく人事上のピンチを切り抜けることができた。
新しく総経理になった男は、銀行員を何十年も勤めあげてきたので、お金の間違いはないが、その代わり守り一方の小心者であった。既に三億円も損を出して勉強したあとなので、私はすべての繊維株を売っ払い、私が証券会社をはじめて以来、百社近い上場企業の中から「この経営者なら」と信頼するようになった台湾玻璃と東元電機の株に乗りかえた。
台湾のような社会信用のまだ充分に発達していない社会では、会社の業績だけを見て株を買ったのではだまされてしまう。会社の業績もある程度、参考にはするが、何より大切なのは、何と言っても経営者の人柄である。他人のお金を任されたことを奇貨として悪用する人と、他人のお金に対して責任を感ずる人とを、この際はっきりと区別してかかることである。
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