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         第17回 
          内湯と内風呂 
        とかく「内湯」と「内風呂」を 
          混同している人が、多いようです。 
        昔々、先人たちは、 
          温泉が湧き出る場所に、湯小屋を建てました。 
          これを、大湯(共同湯)といいます。 
          旅館は、あくまでも宿泊をし、食事をするところ。 
          湯治客らは、手ぬぐいをもって、 
          大湯へ湯をもらいに出かけて行ったのです。 
        やがて、財力のある旅館は、 
          温泉を引いて館内に浴室を設けました。 
          これが「内湯」です。 
          <大湯(外湯)>に対して、そう呼ばれました。 
           
          今では旅館の中に温泉を引いた風呂があるのは 
          当たり前になりましたが、それでも時々、 
          湯治場として栄えた温泉地へ行くと、旅館の玄関前に 
          「内湯あります」と書かれた古い看板を見かけることがあります。 
          これなど、湯治場風情の名残だと言えるでしょう。 
        これに対して「内風呂」は、新しい言葉です。 
           
          高度成長期以降、温泉地はどこも、こぞって大浴場を造りました。 
          旅行会社とタイアップして、団体客を収容するためです。 
          これにより温泉の湯量が足りなくなってしまった温泉地もあり、 
          新たな源泉を求めてボーリング(掘削)をするという 
          本末転倒な現象が、全国各地でくり広げられました。 
          やがて時代は、平成へ。 
          バブル期を迎え、ますます温泉施設はエスカレートしていきます。 
          露天風呂の出現です。 
          「露天風呂がなければ、客が来ない」とまで言われ、 
          小さな旅館までもが屋外に風呂を造りだしたのです。 
           
          「内風呂」とは、この<屋外にある露天風呂>に対して、 
          屋内にある風呂のことを言います。 
        みなさんも、旅館のパンフレットに 
          「内風呂:男1・女1、露天風呂:男1・女1」などと 
          施設案内が書かれているのを見たことがあるはずです。 
          稀にですが、「共同浴場:1(宿泊者無料)」と書かれている 
          パンフレットを見つけるときがあります。 
          宿の近くに、昔ながらの大湯があるのですね。 
           
          外湯がある温泉地は、古くから湯治場で栄えた証拠です。 
          ですから外湯に出合うと、ちょっぴり得した気分になります。 
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