温泉で元気・小暮淳

温泉ライターが取材で拾った
ほっこり心が温まる湯浴み話

第18回
井戸水は温泉だった!

“温泉だと思ったら水道水だった!”
平成16(2004)年、そんなショッキングなニュースが
日本列島を駆けめぐりました。

長野県某温泉地の入浴剤投入発覚に端を発し、
全国で水道水や井戸水を沸かしていた事実が次々と報道された、
俗に言う、「温泉偽装問題」です。

ところが世の中には不思議な話もあるもので、
この騒動とは、まったく正反対のいきさつを持つ
温泉宿があります。

群馬県の旧大胡町(現・前橋市)で農業を営むご主人のもとへ
中上ハツヱさんが嫁いできたのは、昭和31(1956)年のこと。

「いつか商売をしたい」と思っていたハツヱさんは13年後、
現在地に飲食店をオープン。
さらに13年後には、宿泊棟を増設して
念願の旅館経営を始めました。
この時、水が足りないからと井戸を掘り、
井戸水を沸かして大浴場を造りました。

時は流れて、平成6(1994)年の夏。
3人の女性客が、3日間滞在して帰って行きました。
ところが1カ月ほどして、その客が訪ねてきて
「ここの湯のおかげで、神経痛が治った」と、
礼を言ったといいます。
どうも客は、温泉だと思って湯治に通っていたらしいのです。

驚いたのは、女将さんです。
「ならば自分の持病のリウマチにも効果があるかもしれない」と、
その日から毎日、2〜3回の足湯と
朝夕の入浴を欠かさずに行ったところ、
4カ月後には完全に痛みが消えてしまいました。

「もしかしたら、
これはただの井戸水ではなく、温泉かもしれない」
と県に検査を依頼したところ、
『メタけい酸をはじめとする多くの成分が含有』する
天然温泉だと判明しました。
旅館経営を始めて、ちょうど13年目のことでした。
「大胡温泉」の誕生です。

「私の人生は、いつも13年ごとに転機がやって来るのよ」
そう言って笑った女将の嬉しそうな顔が印象的でした。

それにしても、不思議な話があるものです。


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2012年1月28日(土)

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