温泉で元気・小暮淳

温泉ライターが取材で拾った
ほっこり心が温まる湯浴み話

第55回
熱いのに涼しい温泉

川全体が野天風呂になっていることで有名な
群馬県中之条町の尻焼(しりやき)温泉
泉源は長笹沢川の川床にあり、
入ると尻が焼けるように熱くなることから
「尻焼」の名が付いたといい、
昔から痔(ぢ)の治療に効果があるとされてきました。

尻焼温泉の発見は古く、
嘉永7(1854)の古地図に温泉地として記されています。
長い間、村人たちが利用していたようですが、
旅館が建ったのは昭和になってからのこと。
下流にある花敷(はなしき)温泉の旅館が、
別館を建てて開業したのが始まりでした。
花敷温泉が古くから開けていたのに比べ、
尻焼温泉の開発が遅れた理由は道が急峻だったことと、
温泉周辺におびただしい数のヘビが生息していて、
人々を寄せつけなかったからだといわれています。

現在、3軒の温泉宿があり、
すべて異なる源泉を使用しています。
その中で唯一、
自家源泉を所有する「ホテル光山荘」の湯は、
実に不思議な浴感のある温泉です。
泉温は、約54度。
加水も加温もしていないので、浴槽の湯は、かなり熱めです。
到底、すぐに沈むことはできません。
そこで役に立つのが、浴室に備えてある大きな“湯かき棒”です。
これで、ジャバジャバと豪快に湯をもんでやります。
すると今度は、すーっと体が湯の中へ入って行くのです。

もちろん、それでも熱いのですが、
不思議とクールな浴感であることに気づきます。
まるで、ミントの入浴剤の中に入っているような
清涼感
があるのです。
その感覚は、湯から上がってからも変わりません。
あれほど熱い湯に入ったのにもかかわらず、
体がほてることなく、まったく汗が吹き出さないのです。

私が訪ねたのは真夏でしたが、爽快な気分で床に就きました。


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2012年6月6日(水)

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