温泉で元気・小暮淳

温泉ライターが取材で拾った
ほっこり心が温まる湯浴み話

第62回
ぬるくとも効能あつき湯

前回、加水をしたり、加温したりせずに、
湯に人が合わせる温泉の話をしました。
草津温泉のように、熱い湯に苦行のように入る温泉もありますが、
逆に湧き出したぬるい湯に長時間入る温泉もあります。
この入浴法を「持続浴」とか「微温浴」といいます。
一般には、40度以下の温泉で行っています。

ぬる湯の温泉は、昔から湯治場として栄えた
歴史のある温泉地に多く見られます。
群馬県内にも、いくつかありますが、
その中でも34度という体温より低い源泉を
そのまま浴槽に引き入れている温泉宿をご紹介します。

中之条町にある大塚温泉「金井旅館」は、
里山に囲まれた田園風景の中にたたずむ一軒宿です。
歴史は古く、すでに文禄年間(1592〜1596)には
沼田城主の真田信之の妻、小松姫の知行地となり、
街道沿いの温泉として栄えたと伝わります。

旅館の創業は大正6年。
現在の主人、金井昇さんで4代目になります。
「うちは動力を一切使わない、源泉ぶん(かけ)流しだよ」
という源泉の湧出量は、毎分800リットルと豊富です。

ぬるい湯は、長い時間入浴ができるため、
薬効成分が肌から吸収されやすく、
皮膚病に効く温泉が多いのが特徴です。
また長湯により血行が良くなり、
老廃物や疲労物質が排出されるため、精神の鎮静作用が高く、
ヒステリーや不眠症、うつ病にも効能があるといわれています。

いつ訪ねても、浴室には近隣から通ってくる入浴客や
長期滞在する湯治客の姿があります。
1日に8時間以上つかる人はざらで、
中には15時間以上入り続ける湯治客もいます。

浴槽の縁に頭を乗せて体を浮かせながら寝ている人や
本を持ち込んで湯の中で読書をいそしんでいる人など、
思い思いの入浴を楽しんでいるのも、
ぬる湯の湯治場ならではの光景です。


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2012年6月30日(土)

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