前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第43回
歩行者天国風景

この頃は自転車とリヤカーをくっつけたような人力三輪車が、
歩行者天国で客待ちをしています。
タイのシクロというのとそっくりで、
極彩色の模様が描かれているのもあります。
二人も三人も乗せて石畳の町中を走るのは力が要ります。
コペンハーゲンには坂が無いから何とかなるのでしょう。
大変な仕事ですが、なんと若いリキシャ・ウーマンもいます。
夏の間の学生のアルバイトのように見えます。

歩行者天国ではホーム・レスの人達が
ホーム・レス新聞を売っています。
一部400円弱で売れると一部は本人の収入になるそうです。
胡弓を弾く中国人が登場したり、
珍しい弦楽器を東欧の人が弾いたりします。
ピアノを引っ張り出してきて演奏する人もいます。
随分と良い音色なので「あれっ」と思ったら、
ユール・アンデルセンという演奏家でした。
いつもは劇場でコンサートを開く黒人のピアニストです。
寒い時は指先だけ露出する手袋をして、着膨れしています。
寒い日にもわざわざ街頭で演奏するとは、
よっぽど好きなのか、実入りがいいか、仕事が少ないなのでしょう。

ブルース・スプリングスティーンも即興演奏をして、
歩行者天国に黒山の人だかりをつくりました。
デンマークの人だかりは見た目には黒くは無いですが、
日本とそっくりに“人で真っ黒だ”と言います。

中には本物の演奏家の横で、出鱈目に伴奏している人もいます。
よく見たら私の店によく来るすごく太ったお客さんでした。
この人は色々な街頭演奏家の横に付いて、
コバンザメみたいにおこぼれを頂戴していました。
小さな鉄琴を「チラチラ、ポロン」と奏でるのですが、
リズムも音も合っていないんです。
そのうちに、嫌がられたのかそれとも自立する自信が出来たのか、
鍵盤ハーモニカを一人で演奏するようになりました。
以前とは違って、音は切れ目無く出ています。
でもやっぱり出鱈目なんです。
この人は無口で文句を言わない良いお客さんです。
街頭で稼いだお金を持って、せっせと写真を現像に来るのです。


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2004年9月15日(水)

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