前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第69回
ミシュランの三つの星

トゥール・ダルジャン名物の
アク(?)の味もするようなソースは、
鴨の肉をはずした残りを
特性の道具で骨ごと潰して作るのです。
グルメ殺人事件の映画で、コックの頭を締めて潰した道具です。
道具のそばの席だったので
映画で見た場面が再現されるのを眺めました。
胸肉は本当に少量で、
それにうずらのような小さな腿が添えてありました。
私達は
「こんなに量が少なくてこのぐらいの味で三ツ星というのは疑問だ」
と文句を言い合いながら
しつこく腿の骨をほじっていました。
すると例の給仕さんが通りがかりに
「もっと来るから」とそっと教えてくれました。
確かにすぐその後に本当の腿肉とサラダが出てきました。
今度の鴨は少しは食べ応えもあって
美味しかったので満足しました。
さっき齧っていたのは鴨のすね、と言うか腿の下の方でした。

さて問題の会計を頼むと
機械で打ったレシートを持って来てくれました。
鴨の他に牛のコンソメと
グリーン・サラダとボルドーの赤のハーフ・ボトルと水で
3万円ぐらいでした。
幸いお金は足りました。
足りたので最後にコーヒーを追加しました。
デザートはいつも量が多すぎるので注文しませんでした。
この位のレストランなら、
コーヒーには必ず小さなチョコレートやお菓子が付いてくるので
それで充分なのでした。
すると、給仕さんは席が空いたのを見つけて、
セーヌとその向こうのノートルダム寺院が良く見える場所に
取り替えてくれました。
景色は美しく時間もあったので、
パリの最後の日はやっとゆったりとした気分になれました。

私達はコーヒーを飲みながら
今回の食事を振り返る余裕も出てきました。
私達は態度のはなはだよろしくない客でした。
それにワインもハーフボトルだし、
使ったお金も他の人より少ないに決まっています。
それでもこのように見事なサービスをしてくれました。
私達は今までに
こんなに自然で気持ちの良いサービスを受けたことは
一度もありませんでした。
「なるほど、ここは給仕さんのサービスが三ツ星たる所以だな」
と、感心して何度も頷き合いました。
いつかこの店で別の料理をメインにとってみたいと思います。


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2004年10月21日(木)

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