第71回
不動産入門

デンマークに７年住んでいれば、
外国人でも住宅を買うことが出来ます。
同じようにこの国に７年以上連続で住んでいれば、
永久滞在許可証が貰えます。
企業で働いても学校でも何でもいいから７年住むことがめどです。

私達が初めて自分達が住むために買ったマンションは、
広さが36平米しかありませんでした。
たったそれだけの広さで２部屋があり、
シャワーのある風呂場があり、もちろんキッチンが付いて、
セントラル・ヒーティングでした。
こんなに小さくてこんなに詰め込んだマンションは、
３ヶ月捜してこれ一つだけでした。
これ以降もひとつも見たことがありません。
マンションを買ったのは
町の中の賃貸マンションは数が少なくて、
見つけるのがほとんど不可能だったからです。
随分捜したのですが、たまに賃貸が見つかっても高かったのです。

私達が買ったマンションの売り手は、
新婚でいかにもフレッシュなインド人夫婦でした。
私達はマンションの天井を塗り直し、
来る人来る人が眉をひそめる、
アブストラクトな派手な壁紙を張りました。
洗面所兼トイレとシャワー室の壁は
油性ペンキでポスト色の赤を塗りました。
初めての自分の住みかだから勝手なことをしてみたかったのです。
トイレに座る時は目を開けていると、
壁面の赤に黒い点が浮き出てきて頭がくらくらしました。
そこでトイレでは目をつぶる癖がつきました。
天井を塗る為に梯子を登ると、
インド人の残した強烈な香料の臭いが鼻と肺を襲ってきました。
私はオエッと本当に嘔吐しそうになり
「成るほど臭いというのは上にいくものだ。
そして、そこにくっ付くのだ」と知りました。

さてマンションの頭金の20パーセントを払って買ってみると、
月々の支払いは借りた場合と差が有りません。
法律用語も解らないので最初は不動産を買うのは不安でしたが、
それで安心しました。
このマンションに４年間住んでから売ってみると、
価格の値上がりでただ同然で住んだことになりました。
利子は税金の控除になるし、
自分の住みかを売った儲けは税金を免除されるのでした。
このマンションを売った利益で頭金を払い、
郊外の新興都市に長屋を買ってそこには２年住みました。