前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第125回
コペンハーゲンの“住み倒れ”

その昔、妻は老人ホームのキッチンを辞めて旅行しましたが、
帰ってくると再び仕事を捜しました。
我々の住んでいた近くには何故か家具工場が多くて、
新聞で求人をしていたので応募して働き始めました。
フリッツ・ハンセンという家具を作る会社でした。
ずっと後になるまで私達は、
そこが世界的に有名な家具を作っている工場とは知りませんでした。
デンマークの家具が有名なことも知りませんでした。

昔ケネディが大統領選のテレビ討論会で使用して有名になった、
「ザ・チェアー」と呼ばれる椅子があります。
その椅子のデザイナーは
ハンス・ヴェグナーというデンマーク人ですが、
フリッツ・ハンセンは彼の椅子の生産量が一番多い会社です。
日本にも進出していて、青山にショールームがあるそうです。
ヴェグナーの椅子は中国椅子からヒントを得たもので、
疲れの来ない座り心地と、シンプルで美しいデザインが特徴です。
日本にデザインで進出しているデンマークの会社はその他に、
ロイヤル・コペンハーゲンや
照明器具のルイ・ポールセンなどです。
同じく、デザインの美しいハイファイなどを作る、
バング&オルフセンも日本で展開しているそうです。
ハイファイ関係では、
昔はオルトフォンというカートリッジの会社もあって、
日本人の研究者も働いていました。
彼は日本に帰って起業して、
オルトフォンから開発を続けて
今も高級カートリッジを製造しています。
でも、私が日本にいた頃はどれ一つ聞いたことも無い名前でした。

妻の受け持ちは、ピエト・ハインのデザインした重たい食卓の、
アルミニュームの縁をサンド・ペーパーで磨くことでした
ピエト・ハインはPHランプのデザインでも有名です。
このランプは初めて私が働いた幼稚園にぶら下がっていたので、
スーパーでも買えるような安いものかと思っていました。
幼稚園児の家具も“機能的で丈夫だなあ”とは思いましたが、
高いものとは知りませんでした。
アルバー・アールトという、
フィンランドのデザイナーの家具と知って、これにも驚きました。
国会ではハンス・ヴェグナーの
高価なチャイナ・チェアーを大量に使っています。
フリッツ・ハンセンでは、
従業員に家具を安く売ってくれることがありましたが、
それでもその頃の日本製に比べると大変高額でした。
私達は「誰がこんな高い物を買うのだろう?」と、思いました。
後で分かりましたが、
デンマークでは公の施設でもプライベートでも、
良い家具にはお金を出すのでした。
「家具倒れ」の国なのです。


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2005年1月6日(木)

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