前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第204回
アン・マーグレット

まだ私がデンマークに来て1年にならない頃、
仕事場に、私の耳には「按摩が降りた」と聞こえる、
おかしな名前の女性がいました。
慣れてくると、それが「アンマガリータ」という名だと分りました。
スウェーデン出身の、アン・マーグレットという女優がいましたが、
そのデンマーク読みだと気づいたそのまたずっと後でした。
デンマーク語は平坦で抑揚がなく、
発音も美しくなくて、ロマンチックからは程遠い言語です。

赤毛のマーグレットは、
アイスランド人と離婚した若いお母さんに連れられて、
フェロー諸島から引っ越してきました。
その頃七才だったマーグレットは、
私の勤めていたプレイ・グランド(学童保育園)に、
妹を連れて通ってくるようになりました。
フェロー諸島も、グリーン・ランドと同じくデンマーク領ですが、
漁業と牧羊の島です。
テレビで全世界に流れましたが、
鯨が岸に集まってくる季節には、
海を血で真っ赤に染めて、昔通りの鯨獲りをします。
鯨は勿論食用で、漁があった時はおばあさんが袋に詰めて
鯨の肉を送ってくれます。
若く忙しいお母さんの毎日の料理は、
スパッゲティー・ミートソース、ジャガイモとソーセージ、
甘い米のおかゆ、芋と肉ソース。
この4種類のみを順繰りに作るので、鯨の肉はたまのごちそうです。
鳥のやってくる季節には、絶壁で待ち構えて手にした網を振り、
トンボを取るように渡り鳥を獲って、大量に塩漬けにします。
自然のサイクルに合わせた生活をしているのです。
マーグレットは手芸が好きで、
9歳の誕生日におばあさんから贈られたミシンで、
色々な縫い物を始めました。

大人になったマーグレットは、
子供服を売るホーム・パーティー行ってみて
“これなら私も出来る”と思ったそうです。
自分で縫ったものをホーム・パーティーで売ってみると、
ドンドン売れて作るのが間に合わないようになりました。
そこで値上げしてみると、それでも売れることが分りました。
売れたら粗利益は80パーセントで、売れ残りが少ないのです。
服をつくるのは趣味なので、たくさん作るのは楽しくて、
喜んで買ってもらえるのは、これまた楽しいことでした。
しかし、度々ホーム・パーティー行くのも疲れるし、
狭いマンションには仕事場もないのです。
店を持ってもやっていけそうなので、店を持ちたくなりました。
そこで調べてみると、立地の良い店は家賃も高くて、
お店を開くには色々とお金が要ります。
うまくいかなかったことを考えると、
お金を借りるのも怖いのです。
それでも決心して、借りようとした町外れの店は、
他の人に先を越されてしまいました。


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2005年4月27日(水)

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