前川正博さんはこうして
福祉の国で、国にたよらずに根をおろしました

第225回
謝罪をして、歴史を客観的に

デンマーク政府は、戦争中にデンマーク逃れてきたユダヤ人を、
ナチス・ドイツに引き渡しました。
デンマーク首相はそのこと対して公式に謝罪しましたが、
それについてあちこちから色々な意見が続出しました。
中には「謝罪したのは間違いだ」という意見の人もいました。

ある歴史家は
「首相の謝罪で、酷い歴史から逃れられるものでもなければ、
それが未来の調査に何らかの意味を持つものではない。
後の世代が、親や祖先のしたことを謝れるとは、
私には思えないのです」と言い
もう1人の歴史家も
「ユダヤ人の亡命者を送り返したことは、
デンマークの歴史の汚点です。
しかし首相が謝るのは無意味で、それは誤りです。
”首相ということで国の責任を負え得るのか?”
”人は他人のために謝れるのか?”と、哲学的な疑問です。
責任のある者だけが謝れるのであります。
と、いうことは謝罪はすでに遅すぎるのです」

同じ歴史家は続けて
「首相は、謝ったことで、占領下のナチ協力者の白黒が、
やっとはっきりできると思っているようです。
そして国民は”ついに真実の歴史が浮かび上がる”
と期待するかもしれません。
しかし、戦時下の真実というものは無限に複雑な様相なのです。
そのような簡単なものではありません」
と警告しています。

先日「小さな言葉の大きな働き」という見出しで、
「”ごめんなさい”は子供から大人まで、
人を癒す大きな力を持っている」
という副題のついた記事がありました。
そこには、各界の指導者の謝罪について述べてありました。
デンマークの首相は謝っただけではなくて、
ドイツ侵略下のデンマークの歴史の教科書を、
書き改めようとしています。
方法としては
「外国の歴史家に調べ直してもらおう」と提案しています。
どこでも自分の国の歴史は飾りたいようで、今あるのは
「英雄的な反戦運動」のみをクローズアップしたものだそうです。
首相はこれを機会に、雑音に邪魔されない、客観的な歴史を、
デンマークの次の世代に残したいようです。


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2005年5月26日(木)

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