経済成長が続き、工場の建設が順調に進んでいる間は、株価も高値を維持しているし、資金ぐりにも問題はなかったが、設備投資が一巡して生産が開始されても業績が思うように伸びないとなると、国際収支の赤字は改善されるどころか、逆に増大する。そういうタイミングを狙ってソロスに代表される国際的な相場師どもが株と為替に大量の売りをかければ、今回の東南アジアの通貨不安のようなことが起ってしまう。
先ず経済に地盤沈下の兆しが見えると、外国資本は株を売って資本を引き揚げようとする。株を売った代金はすぐにも地元通貨からドルに換えられるから、地元通貨が暴落してドルが暴騰する。すると、ドル建てで起債をしている企業は地元通貨の値下がりした分だけ借金の負担がふえるし、輸入資材の値上がりと国内販売の不振によって業績の悪化した分だけ経営が困難になる。
それを見ると、資金回収が難しくなることをおそれた銀行が資金回収に乗り出すから、期限の来た借金は書き換えを拒否されるし、期限が来ても回収できない借金は不良債権化する。企業の閉鎖や倒産によって資金回収のできなくなった銀行は預金の払い戻しもできなくなる心配があるから、通貨不安によって直撃されない企業や個人預金者まで自分たちの持っているお金を地元銀行から世界的に信用のある外国銀行に移しかえようとする。そのためにただでさえ貸金の焦げついた地元銀行はますます資金難におちいって、シャッターをおろすか、政府に駆け込んで救援を求めるよりほかなくなるのである。
ひとたび企業がドル建てで設備資金を導入しているところは、一度通貨不安に見舞われると、どこも甚大な被害を蒙る。ドル建てでなく、自国通貨で借りている場合でも、自国通貨が切り下げになると、さらなる通貨安を防ぐために金利が引き上げられるから、金利に追われるようになる。
国内市場を相手の商売はもとよりのこと、製品の大半を輸出しているメーカーの場合でも、部品の輸入に支障をきたしたり、地元下請け業者からの納入が遅滞して生産ラインがストップしてしまうので、一時閉鎖に追い込まれたり、人員整理に追い込まれたりする。
国内向けの商売に至っては、多くの企業が半身不随になって身動きができなくなるから、店じまいをするか、身売りをする以外に方法がなくなる。
そうした身の破滅の原因はどこにあるかというと、(一)物の売り買いをするために支払われるお金以外の投機資金が為替市場に集まっていること、(二)経済の発展を急ぐあまり、設備資金の大半を海外からの短期借り入れに頼りすぎたこと、に帰することができる。
その証拠に、ドルの出入りにきびしい交通整理を実施している中国大陸と、ドルの出入りは比較的自由だが外国から借り入れのほとんどない台湾は、通貨不安の大波をかぶらないですんでいるが、設備資金の大半を外資に頼った韓国と、基本的に韓国と同じ路線を歩んだ東南アジアの成長国はことごとく甚大な被害を蒙った。
日本は資金提供国としての立場はアメリカと同じだが、アメリカに物を売る立場では、アジアの国々の一員である。したがってアジアに対する資金提供国としてもまた製品の対米輸出国としても二重に損害を蒙る立場におかれているといってよいだろう。
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