13. 「時間」にまさる名医はいない
「ピンチの法則」五力条
元手がないと商売はできないものだと思い込んでいる人が多い。倒産をすれば元手にするお金もなくなる。お金がなくなれば商売ができなくなるから、収入の道もとざされてしまう。倒産に対する恐怖は、財産を失うことよりも、実は将来の収入の見込みが立たなくなることからきている。
将来どうなるか、という不安は、何も倒産したときだけに起こるものではない。人によって感じ方は違うだろうが、今まで親から送金してもらって学校へ行っていたのが、いよいよ卒業をしてこれから社会へ出て一人立ちして行かなければならないときにも、同じように起こる。
嘘のような話だが、私の場合にも、大学を出て故郷へ帰り、就職もしないで自分で何とかやって行こうと思ったときには、「いったい、これからどうなるのだろうか」と内心、暗澹たる思いがしたことを今でも記憶している。
私の場合はもう一回、香港へ行って同じ思いをくり返すという場面があった。二十四歳のとき、私は台湾から政治亡命をして香港へ渡り、「金も持たず」「言葉もわからず」「学歴も役に立たず」「就職のあてもなく」「友達もなく」、また「再び故郷へ帰ることもならず」異郷にただ一人おっぽり出されてしまった。
同郷の知人をたよって居候をきめ込み、約一年間、流浪の明け暮れであったが、このとき心配のあまりベッドに寝ころがったまま一睡もできず、窓が白んでくる体験を何回となくやったし、また目を悪くして、一カ月かかって下手糞の英語で「ファーイースト・エコノミック・レビュー」に寄稿をしてやっともらった一〇〇香港ドルの中から、眼鏡代に八五ドルもって行かれたこともある。
そのときも先の見込みがまったく立たず、心細い思いをくり返したが、やがてどこからともなく結び目が解けて、次の道がひらけていった。経済的なピンチについていえば、その後も何回となくくり返したが、似たようなことを何回か経験すると、慣れっこになるというほどではないが、ピンチにも法則があることにいやでも気がついてくる。
「ピンチの法則」とは何かというと、

(一)ピンチというのは人生のリズムみたいなものであるから、周期的に必ずやってくる。用心して予防策を講じていても、避けることはできない。
(二)ピンチにおちいるときは、身辺におこることがいずれもマイナスに働くから、八方塞がりの感じになる。
(三)ピンチにおちいると、奈落の底にでもおちるような不安に襲われるが、それは心理的なものにすぎず、必ずどこかで底に足がとどく。ただし、必ず一定の時間の経過を要する。
(四)ピンチの折返し点は、恐怖におちいって想像したよりもかなり上のところにある。つまり人間は自分で考えたところまでは、なかなかおちこまないものなのだ。
(五)ピンチから這いあがるキッカケは、ピンチにおちいる前に考えていたようなことからは生まれてこない。苦しみにきたえられ、それが薬になってはじめて次の対策が生まれてくるのである。

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