第1087回
発明の持ち込みは嫌がられます

新しい発明が新しい産業を生み出します。
だから発明家になってもいいし、
それを企業化するのもやり甲斐のある仕事です。
私は何もないところから形のあるものをつくり出すことには
何の抵抗もないし、むしろ興味を持って推し進める方ですが、
自分でやらずに企業化のできそうな会社に
持ち込むこともあります。

もう何十年も前のことですが、
私が「財務相談室」をつくって人の相談に乗っていた頃、
私のところにプロパンガスのメーターの特許をとったから、
どこか企業化してくれる会社を紹介していただけませんかと
依頼を受けたことがあります。
私は技術のことはよくわからないので、
本人を連れてリコーの創業者である
市村清さんに会いに行きました。
市村さんは名古屋の高野精密という腕時計の工場の再建を
時の総理佐藤栄作から頼まれてから間もなくのことでした。
リコー時計と社名変更したその会社では
水道メーターをつくっていたので、
そこの仕事になるのではないかと思ったのです。

市村さんはとても仕事熱心で、しかもせっかちな人でしたから、
すぐに研究室の主任を呼び、検討するように命じました。
あとできくと、そのメーターには欠陥があって
とうとう物にならなかったそうですが、
それがきっかけになって
まだプロパンガスのメーカーのなかった時に
はじめてメーターをつくることに成功し、
遂にいまのリコーエレメックスの
メイン商品にまで成長しました。
私の持ち込みがきっかけですから、
春秋の筆法を持ってすれば、私がプロパンガス・メーターの
生みの親だったということになります。

それに似たようなことはいくつもありますが、
どこの会社の研究室もよそから持ち込まれた
発明や特許はとても嫌がります。
研究室は何をやっているんだと
社長から文句を言われるからです。
大会社の研究室に行くとさんざんけなされた上に、
うまく特許にひっかからないで
出し抜く方法はないかと考える
きっかけになるのが関の山です。


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2003年3月2日(日)

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