第1433回
大企業中心の就職戦線に異状あり

いま大抵の人が自分の職場や仕事について
改めて考えなおすところまで来てしまいました。
私が小説家を志して
亡命先の香港から東京へ戻ってきてから
ちょうど半世紀たちましたが、
ふりかえって考えてみると、
あの頃から日本の国は工業社会を目指して
変身をはじめたのです。

まだ誰も日本人が職人気質の国民であることに
気づいていませんでした。
占領先から追いかえされて
職につきたくとも職がなかったので、
田舎の親戚をたよって帰農しようと考えた人も
たくさんいました。
でも土地も狭いし、
それに比べて人口が多すぎたので、
工業に従事して手間賃稼ぎをするよりほかに
途がなかったのです。

安い賃金と安い円を見込まれて
加工業でメシが食えることがわかると、
仕事のあるところを目指して
人がドンドン集まってきました。
工業は労働集約的な仕事からはじまりますから、
都会地目指して人が集まってきます。
それも土地の中心部よりも郊外の地価が安くて
交通の便利なところに工場が集中しますから
見る見る大都市周辺に工業都市が誕生し
僅か2、30年で日本国中の人口分布図が
一変してしまいました。

とりわけ工業生産は企業を大規模化するので、
居並ぶ中小企業の中から
大企業に成長する企業が突出し、
大企業中心の産業地図ができてしまいました。
大企業が大量生産をやるためには
従業員の定着が必要ですから、
そのための年功序列給や
終身雇用制がうまくとり入れられて、
いつの間にか大企業中心の雇用体制が
確立してしまいました。
日本的経営の優位性が認められ、
世界中の話題になるようになると、
日本人の愛社精神が
賞賛の的になったりしましたが、
これは昔からあるものではありません。
大企業中心の体制が工業生産に有利だったから、
誰もが大企業に就職することを目標としましたが、
その魔法がとけて神通力を失うと、
就職前線そのものに異状が発生してきました。
大企業の吸引力はかなり弱まると考えていいでしょう。


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