第1591回
氣平らかなれば一生は楽し

「氣平一生楽」とは、
カッと頭に血がのぼるような生き方をやめて、
できるだけ穏やかに生きる術を
心得るようになれば、
人生は楽しいものになるというほどの意味です。

これは私が発明した金言名句ではありません。
かつて北京大学の校長をやっていた
辜鴻銘が日本へ来た時、
日本人の友人のために短冊に書いたもので、
ご本人の署名はありませんが、
かつて私の顧問弁護士をやっていた人が生前、
私にくれたものです。
何かのひょうしに辜鴻銘の話が出て、
私が辜鴻銘の本を読んでいると言ったら、
とてもびっくりして、
壁にかけてあった短冊を私にくれたのです。

辜鴻銘のことについては
芥川龍之介の「支那遊記」という本の中に出てきます。
自分が北京に行くことになったら、友人に
「紫禁城見ざるも可なり、辜鴻銘逢わざるべからず」
と言われて、
わざわざ尋ねて行った時のことが記述されています。
辜鴻銘は南はペナン島に生まれ、
西はエヂンバラ大学に学び、
東は日本婦人を娶り、
北は北京大学の校長をやったので、
自ら東西南北を號した
頑固な東洋思想の塊りのような人でした。

この人には
「ザ・スピリット・オブ・チャイニーズ・ピープル」
という英文の著書が残っていますが、
西洋文明の洗礼を受けた反動として
長衫を着用、辮髪を結うといういで立ちをしていました。
或る時、爺さんの辮髪をイギリス人が、つかんで
「ピッグス・テイル」(豚の尻尾)とあざわらったら、
すぐさま相手のネクタイをつかみかえして
「ドッグズ・リング」(犬の首輪)と言いかえした
という逸話が残っています。

その辜鴻銘が日本に来た時に
残して帰った筆跡ですが、
なるほど人間、いつもカッカしていては
人生楽しいことはありません。
自ら努力してヒスをおこさないように
穏やかに生きることが肝心です。
ふだんから自分の精神状態を
コントロールすることのできる人には必要ありませんが、
感情の起伏の激しい人には必要な文句ですね。


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