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第2151回
気がついたら日本人は資本家?

生産を成り立たせる条件として、
アダム・スミスは
資本と労働力と土地の3つをあげました。
物をつくるのには働く人が絶対に必要ですが、
いくら働く人がいても、
物はすぐにはできてきません。
物が売れる商品としてできて来るまでの間に、
原料になる素材や設備を手に入れる必要があるし、
働く人がその間、食いつなぐための食い扶持も必要です。
それを調達する資金を提供するのが資本家です。

そうした生産をやるためには場所が必要です。
特に農業の場合は土地のあることが絶対条件です。
農業以外の場合は、
そんなに広いスペースを必要としないかも知れませんが、
土地の必要なことにおいては
何の変わりはありません。
ところが、土地のはたす役割は資本でも労働力でも
説明しきれない部分があります。
一等地とか二等地とか、
あるいは同じスペースでありながら
肥沃な農地もあれば痩せた農地もあります。
消費地に近い土地と遠く離れた土地とでは
それによってもたらされる収入がまるで違います。
その値打ちをお金で評価することはできますが、
そのはたすメリットは労働力と全く違います。
そうした役割を無視して
土地の効用を説明できないので、
経済学者たちは土地を生産手段の一つに加えたのです。

以上、3つのうちで、
資本が一番優位に立ちました。
どうしてかというと、
資本で土地や生産手段を手に入れることもできたし、
お金の欲しい人手を集めて
働いてもらうこともできたからです。
その結果、新しく創造された富を
資本を提供した資本家が
一人占めすることができたので、
資本家のふところが一番肥えました。
人類の歴史と共に長い領主と人民との間の
不平等のほかに資本主義の時代になると
資本家と労働者という新しい不平等が発生したのです。
20世紀は資本家と労働者が
一緒になって生み出した富の取り分をめぐって
世界中で争う世紀になったのです。
日本人はそうした中にあって
金持ちの資源国になる争いに敗れましたが、
気がついて見たら資本の提供のできる
金持ちの国の一員になっていたのです。
いまでもそんなことあるかと
思っていない日本人は
たくさんいるでしょうが・・・。


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