中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2457回
私の著書に法則や鉄則の本が多いわけ

事業というのは何もないところから形をつくり、
誰の目にもそれとわかる巨像につくりあげることです。
何もないところに大波を立てるようなものですから、
反対もあれば、摩擦も起ります。
そんなことをいちいち気にしたり、怖れていたのでは
一歩も先へ進めません。

そこで電通の吉田秀雄社長は予めそうしたトラブルを想定して、
鬼十則の中で、
第六条 周囲を「引き摺り廻せ」
引き摺るのと引き摺られるのとでは
永い間に天地のひらきが出来る。
第七条 「計画」を持て、
長期の計画を持って居れば忍耐と工夫と
そして正しい努力と希望が生れる。
第八条 「自信」を持て、
自信がないから君の仕事には迫力も粘りもそして厚味すらない。
第九条 頭は常に「全廻転」
八方に気を配って一分の隙もあってはならぬ、
サービスとはそのようなものだ。
第十条 「摩擦を怖れるな」摩擦は進歩の母、積極の肥料だ。
でないと君は卑屈未練になる。

以上が「電通の鬼十則」です。
吉田さんは電通の社員の尻を叩くために、
この鬼十則をしたためたのでしょうが、
これは自立独立の志を持った仕事の鬼を
成功に導くための法則です。
但しこれだけの心がけのある人なら、
多分、そう長いことは電通にとどまってはいないでしょう。
同じ広告業を目指す人だったら電通の強敵になっている筈だし、
もっと他に才能のある人か、全く違う業界を狙う人なら、
電通のタレントか、クライアントになっている筈です。

私は小説家として一人前に通用するようになると、
すぐ目移りして
株や利殖の世界に足を踏み入れてしまいましたが、
もし小説に専念していたら、
文章読本とか、小説作法のような本を
書いていたに違いありません。
私は一つのことを追求していると、
すぐさまざまな現象を貫く法則とか、鉄則に
気がついてしまうからです。
「株の法則」「成功の法則」
「変わる世の中、変わらぬ鉄則」とか、
私には現象よりも法則と名のついた本が多いのはそのためです。


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2006年12月1日(金)

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