中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2732回
海外への出稼ぎチャンスはふえる一方

不況下のインフレというのは、
収入はあがらないのに生活費だけが高くなるという意味ですから、
日本人にとっては
戦後の成長経済はじまって以来のピンチということになります。
バブルがはじけて倒産まで追い込まれた人は
大へんな目にあいましたが、
一般の人は減給や収入減に見舞われたとしても
物価もかなりダウンしましたから、
何とか辻褄をあわせることができました。

でも今度は経済成長は望めませんから、
賃上げはほとんど期待できません。
その中にあって物価だけ上がるのは、
原料高の大波が押し寄せているからです。
中国やインドなどの人口の多い地域で経済成長がはじまると、
人々の所得が上昇して消費がふえます。
13億の人口を擁する中国で毎朝、卵を一つ食べるようになっただけで
13億羽の鶏を養う必要が起ります。
それらの鶏に食べさせる飼料を考えただけで、
どのくらいとうもろこしの畑を拡げなければならないか。
その上、ふえ続ける自動車までがとうもろこしを食べるとなったら、
とうもろこしの値段が大暴騰するのは子供にもわかります。
キューピー・マヨネーズが
10何年ぶりに値上げを宣言したのを見ても、
世の中がどの方向に向って走り出しているのかわかります。

景気がよくなったから起ったことではありません。
石油でも石炭でも鉄や銅やアルミでも
消費の世界的増大が物価の上昇を押し上げているのです。
発展途上国の消費が増大すれば、
先進国は生産をふやすことができないのに
物価の上昇によって少しずつですが、
消費が影響を受ける時代に入ろうとしているのです。
日本や台湾や韓国もその影響を避けることはできません。
その上、為替高になれば、
輸入する原料が真っ先に高くなりますから、
「原料高の製品安」が時代のトレンドになります。
それを避けようと思えば、
生産拠点を更にコストの安いところに
移動させざるを得なくなります。
相撲取りがモンゴルから日本に出稼ぎに来るように、
日本人はお金と設備を担いで、
外国に動くチャンスはふえる一方です。


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2007年9月2日(日)

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