中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2810回
いま日本の本社工場がおかれている位置

いまの日本の会社はどんなに大きくなっても、
サラリーマンあがりによって経営されるようになったので、
責任をとる人がいなくなって
冒険ができなくなってしまいました。
日本国内でやっていたのでは国際競争ができなくなったので、
労働集約的な仕事から
工場をコストの安い外国に移すようになりましたが、
同じ会社の中でも高度の技術を要し、
お金になる仕事は本社に残して、
生産性が低く手間のかかる仕事だけを
海外に移すことを考えます。
そうなると、本気になってコスト・ダウンをするのではなくて、
同業者と同じことをするだけですから、
抜本的な競争力をつけたことになりません。

高度の技術は本社に残すと言っても、
技術は研究所が発明したものではなくて、
現場における偶然や改善から生み出されたものが多いので、
海外の工場が稼働しはじめると、
新しい技術は海外の工場で次々と誕生してきます。
また外国人では駄目だと思っても、
知能程度が特に低いわけではありませんから、
しばらくすると、どちらが本社かわからなくなってしまいます。
私の知り合いの中には海外で仕事をはじめるに際して、
いきなり本社ごと移してしまった人がおりますが、
しばらくすると、それが正しかったことが証明されます。
工場を移したり、新しい仕事をはじめる時は、
少し余力を残しておこうなどと考えないことです。
一番一番の相撲を取る時に、余力を残しておこうと考えると、
必らず相手に押し切られてしまいます。

ところが、いまの日本の会社を見ると、
失敗をしても再起の余地が残っているような
へっぴり腰の配置をしますから、
現地がうまく軌道に乗ったら
本社の影がうすくなるという結果になっています。
背水の陣になっていない海外進出が
いま日本の生産工場を弱体化しています。
10年もすると本社が競争力を失うことは目に見えています。


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2007年11月19日(月)

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