中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2851回
フランス料理界の最大の顔役は辻静雄さん

私は「ヨーロッパ一等旅行」という
仲間だけのヨーロッパ旅行を毎年1回、
20年くらい続けたことがあります。
飛行機は必らず一等に乗ること、
ホテルはその土地で最高級のホテルに泊ること、
食事は三つ星のレストランでとること、
三つ星レストランのない場合は
その土地で最高級のレストランに予約すること。

どうしてそういうことを提案したかというと、
人はお金儲けにばかり夢中になって、
お金を使うことを後廻しにしてしまうからです。
私に言わせると、
「お金は儲けただけではまだ半製品で、
使ってはじめて完成品になる。
ところが、大抵の人は半製品のまま死んでしまって、
親子二代ではじめて完成品にする。
それじゃつまらないから、
一代で完成品にする努力をしようじゃないか」
と金儲けのうまい周囲の人に誘いをかけたのです。

それまでは私も妻や家族を連れてのヨーロッパ旅行は、
飛行機の切符は往復が20万円くらいの安売り切符でした。
それが飛行機からとびおりるような気持で一等に変わったのは、
私の家の食事に辻静雄夫妻を招待した時のことでした。
辻夫妻はパリに行くのに
いつも大枚をはりこんで一等に乗っているとのことでした。
一等は当時一人が119万円かかり、
安売りは20数万円でしたから、
飛行機の中は少し窮屈でもガマンをすれば、
差額だけでリッツやブリストルに泊った上で
三つ星のレストランの支払いができます。

私がそう言うと、辻さんは笑って
「邱センセイのようなロールスロイスに乗っている人が
ケチをしてどうするのですか。
一等は乗ってみないとわからないこともあるし、
乗った分だけトクをすることもあるのですよ」
そう言われて
それこそ飛行機からとびおりる気持で一等に乗ったら、
とうとう一等からとびおりられなくなってしまったのです。
以来、フランスに行った時は
三つ星のレストランの予約は皆、辻静雄さんが
それこそご本人が他界するまでやってくれました。
フランス料理界の世界で
あれほど顔のきいた日本人はありませんでした。


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2007年12月30日(日)

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