中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3055回
農業移民をしても成果が期待できません

戦前、日本がまだ貧乏だった頃、
ブラジル移民というのがありました。
人口過剰でロクな仕事がなかったので、
農地がいくらでもあるブラジルに農業をやるために
農民を移住させたのです。
ブラジルはブームになっていたゴムの栽培で人手不足が続き、
労働力のあまっている国からの移民を歓迎したのです。

しかし、付加価値の低い農業生産に従事したのでは、
よほど才覚のある人でない限り、食べるのがやっとですから、
一生、貧乏が続きます。
そうした時代の人々が
サンパウロの周辺に定着して日本人村を形成し、
のちに労働力不足の日本に労働力の提供をするという
不思議な構図がつくられました。

また敗戦になる少し前に満州国を関東軍がでっちあげた時、
軍の力で日本の農村地帯から開拓民を送り込みました。
しかし、これも日本の敗戦によって
多くの戦争孤児を中国に残すきっかけになってしまいました。
農業のような付加価値の低い仕事に従事するために
海外に移民をしても、
将来、自分たちの国に役に立つ人材や
産業界のパイオニアをつくることにはならないのです。

かつて中国からアメリカに送り出された労働者や
フィリピンやタイから
いま産油国あたりに送り出されている労働者は
農業に従事している人はほとんどなく、
都会の日雇い労働者からはじまって、
商業や工業で働く人がほとんどなので、
その中から立身出世して
その土地で然るべき社会地位を築いた人もあれば、
自分らの国に戻って然るべき指導者になった人もたくさんいます。

ですから、農業をやるために移民をしては
よほどの例外的な仕事でない限り、先行き見込みはないのです。
私は品種改良や等級別生産のために
中国各地に人を送り込む計画を立てていますが、
これはあくまでも例外です。
外国に人をやるなら、付加価値の大きい産業分野でないと、
大きな成果をあげることはできません。
今後についても同じことがくりかえされることになる筈です。


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2008年7月21日(月)

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