中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3344回
世間の常識に反した農法で挑戦

さきにもちょっとふれましたが、
私は寧夏回教自治区の中衛市というところで
大規模農業をやることで地元の政府と合意しました。
一区画が200万坪もありますので、
うちの台湾のゴルフ場の10倍ほどの広さです。
見渡す限りの沙漠で、木が一本も生えていませんから、
はたしてこんなところで農業ができるのかと
誰もが首をかしげます。
現に私に50年間の使用権を許可してくれた政府の市長さんも
水のないところではたして農業が採算にのるのかと
疑いの目で見ています。

でも私と30年もつきあいのある永田農法の永田照喜治さんは
「だからやり甲斐があるのですよ」と大張り切りです。
30年前に日本を代表するプロデューサーで、
井上靖さんの芥川賞受賞作「闘牛」のモデルになった
小谷正一さんに紹介されて、
永田さんの悪戦苦闘ぶりを見守ってきた私は
沙漠の開墾という仕事を持ち込まれた途端に
すぐに永田農法を思い出しました。

永田照喜治さんは野菜の栽培をするのに必らず
その原産地まで行ってその成長ぶりを観察します。
たとえばトマトの原産地は
南アメリカのアンデス山脈の中と言われており、
そこに行くと雨量も少く、
土地も石ころだらけで痩せ細っています。
そういう土地で育ったトマトは空気中の水分をとるために
枝から葉っぱまで細かい毛を一杯出します。
そうやって実ったトマトは水分に恵まれたトマトよりも
2倍から3倍の糖度があるようになります。
ちょうど金持の息子よりも貧乏人の息子の方が
生きるために一生懸命働くようになるように、
きびしい環境で育てる方が質のいい果実ができるのです。

そういう農法を日本でやろうと思えば、
雨よけをしたり、温度の調節をしなければなりません。
お金のかかる農業になってしまいます。
私に持ち込まれた沙漠の畑仕事は
そうした条件をお金をかけずにやれそうな条件を
ほぼ充たしていると瞬間的に直感したので、
すぐ永田さんに連絡をしたのです。


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2009年5月6日(水)

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