中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3634回
創業者の息子が蹴り出されて次は?

士農工商、どんな職業に属している人でも
家業というものがありました。
サムライの家に生まれた子は、
親の跡をついでサムライになりましたが、
殿様に仕える職業はいわば世襲制公務員ですから、
ポジションが1つしかなければ長男しかその後を継げず、
次男以下はいわゆる冷飯食いで、
うまく養子の口にでもありつけない限り、
日陰者として生涯を送ることになります。

百姓の子は百姓をつぎ、畳職人の子は畳をつくり、
どこの家にも家業がありましたので、
オヤジの家業をセガレが継ぐのは世間の常識でした。
ですから明治以降、更には終戦後、
オヤジが新しい事業を切りひらいて社会的地位のある身分になると、
それを家業と考えて我が子に後を継がせたいと
ほとんどの人が考えます。

私はたまたま昭和30年の半ば頃から株式投資にかかわった関係で、
この50年間、日本経済が世界的水準に達するまで
多くの経済人とつきあってきました。
企業家として大成功をした人は誰でもできることなら、
家業としてセガレに後を継がせようとして涙ぐましい努力をします。
10人に1人くらいはそういう能力のある息子がいて
創業者の名前をけがさないですんでいますが、
大抵はバカ息子でオヤジが死ぬと会社を危機におとし入れて
会社から蹴り出されてしまいます。
どうしてかというと、オヤジとムスコは顔は似ていても
頭の中の構造が違うことが多いからです。

そういうことをきちんとわきまえた人の中には
本田宗一郎さんのように
はじめからムスコにあとを継がせなかった人もありますが、
ほとんどが性懲りもなく同じ失敗をくりかえしています。
恐らく今後もまた同じことがくりかえされることでしょう。
しかし、結果はいつも同じで、
創業者の手足をやっていた人がその修復をやらされ、
結果としてサラリーマン資本主義が日本に定着してしまったのです。
良くても悪くてもこれが日本経済の現実の姿です。


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2010年2月20日(土)

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