| 第3641回 シャッター通りが駄目になっても
 
 大都市に出て成功する人も、地方都市や田舎で成功する人も、同じ日本人ですから気がつかない人が多いかも知れませんが、
 自分の生まれ故郷で事業を起して成功する人は滅多におりません。
 もしそういう人がいたら、その人は学校は都会に出て学び、
 卒業後も家には帰らず、都会で就職した人たちです。
 そういう人たちが家業を継ぐために故郷に呼び戻されても、
 そのまま継げる家業があるわけではありません。
 他所で修行して覚えたことを故郷に持ち帰って
 はじめて新しいビジネスになるのですから、
 農業以外に生まれ故郷でやれる仕事はないのです。
 とりわけ戦後、地方都市の商店街を大きく変えたのはスーパーです。でも、スーパーは
 商店街にいままであった仕事をまるごと奪う商売ですから、
 自分の生まれたところでやれる人は先ずありません。
 地方で成功したスーパーのおやじさんたちにきけば
 すぐにもわかることですが
 成功者のほとんどが隣りの県か、
 一番近くても隣りの町から来た人たちです。
 言葉の問題もありますが、
 それと同じことをこれからやろうと思えば、
 自分の故郷ではなくて上海か、北京か、
 でなければホーチミンか、バンコックかということになります。
 しかし、生まれ故郷でやる仕事がなくなったら、かつての日本国内で人口の大移動が起ったように、
 守備範囲を拡げて外国に行くかというと
 どういうわけか、いまの日本の若いジェネレーションは
 いまある仕事にしがみつこうとします。
 一旦、根を下ろしたら、
 「さあ、もっとしっかり根を下ろして」ということですから
 植物的発想をする人が多いのです。
 昔は長州なら長州、薩摩なら薩摩しか、
 生活の道のなかった人たちが、
 日本全国で働くようになったのですから
 次は地球全体に拡がってもおかしくはないのです。
 それなのに、シャッター通りに育った人は
 シャッター通りに仕事がなくても、
 シャッター通りから出て行こうとしないのです。
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