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第3852回
予想もしなかった「一枚の繪」の誕生

油絵を1枚1枚、絵画きさんに描いてもらって、
それを一般家庭に1枚5万円で、
但し毎月5千円の10ヶ月払いで販売するビジネスはどうですか、
と竹田さんは私のところへ相談を持ち込んできました。
まだどこの家も壁にカレンダーか、
俳優さんの大きなブロマイドをかけていた時代のことです。

私はその少し前から「求美」
という季刊の美術雑誌を発行していました。
高度成長で人々の懐具合が豊かになり、
絵に対する関心が広がると考えたからです。
ついでに申せば、
それまでは画展をデパートでひらいても
一枚一枚の画に値段はつけていませんでした。
私はコレクターをやる人はもちろん、
絵の好きな人ですが、
蒐集した絵が所蔵しているうちにいくらになるかについて
無関心なわけがない。
だから自分の雑誌に載った絵の広告にも値段を入れさせたし、
デパートの美術の係りにも値段を入れるようにすすめました。
今日デパートの展覧会の絵の下に
小さく値段がついているのは私のすすめによるものです。

竹田さんが「一枚の繪」の企画を持って
私のところへ相談に見えたのは
ちょうど檜のブームがはじまる直前でした。
私はすぐにもその場で返答できたのですが、
家内は絵心もあるし、
かねてから新商売に関心を持っていましたから
「家に帰ってカミさんと相談してから返事します」
と答えたら、
竹田さんに「お金儲けの神様にはまだカミさんがいるんですか」
と笑われました。

家に帰って家内に竹田さんのニュー・ビジネスの話をすると、
うちのカミさんは「頃合じゃないですか。
竹田さんもお金に困る時にきているようですから、
あなたが銀行に預けてある定期預金をおろして助けてあげたら」
と言うのです。
こうして一世を風靡した竹田厳道さんの
「一枚の繪」のブームがはじまったのです。
資本金500万円ではじまった「一枚の繪」がブームになると
年に15億円も売るようになりました。
これも予想もしていなかったことの1つです。


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2010年9月26日(日)

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