中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4049回
災害は日本メーカーの世界戦略にプラス

日本の産業界で一番早くから工場を海外に移したのは、
海外で他国の製品と競争関係におかれた輸出産業でした。
競争に負けるのはコストが高すぎるからで、
コストを下げるためには労賃の安い国で生産するか、
税金が安くてすむ消費国に生産基地を移す必要があったのです。

そのためにパーツのメーカーを
優先的に韓国や台湾に移した完成品メーカーもあれば、
完成品の工場をアメリカやヨーロッパの
消費地につくった自動車メーカーのような例もあります。
早くからその必要を痛感して先陣を切ったメーカーもあれば、
同業他社の後塵を拝してやっと時代の波に間に合った
ノロマのメーカーもあります。

しかし、海外に生産基地の展開をした企業も、
日本国内の大地震を予見してはいなかったし、
ましてや大地震の被害を受けた原子力発電所が
全国に及ぼした被害と恐怖心を想定に入れていませんでした。
実際に災害が起って見ると、
直接被害を受けていない地域でも電力が来なくなったり、
交通が渋滞したりして操業がストップしてしまいました。
国内はもとよりのこと、国外に組立工場を持ったメーカーでも、
パーツが不足するために操業がストップしてしまったのです。
とりわけ自動車メーカーは、新聞も報道しているように、
海外工場まで減産や休業に追い込まれています。

ですから海外進出が次のテーマになっているメーカーが
この次の戦略を展開するにあたって、
世界中どこで天変地異や戦争が起っても、
企業全体としてそれに対応できるだけの配慮をする必要があります。
福島にはじまった地震と原発のトラブルは、
被害者にとっても、日本の国全体にとっても大へんな損失ですが、
ちょうど国境を越えて日本企業の再配置をする転換期にあるだけに、
「一番悪い時が、一番のチャンス」
と考えを改めていいのではないでしょうか。
少くとも新しい時代はそういう戦略を展開できる人が
パイオニアになってひらけて行くものだと私は見ています。


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2011年4月11日(月)

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