中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4054回
中国問題の謎の半分くらいは解けます

昨日、私は内田樹さんの
「街場の中国論」(ミシマ社刊 1600円+税)の
ご一読をおすすめしましたが、
著者の論陣や物の見方に全面的に賛成したわけではありません。
ただ阿呆の一つ覚えみたいに、中国の抬頭が気に食わなくて
中国人と中国政府が駄目になることを
念頭においた中国論が多い中で、稀れに見る正論です。
姿勢と角度がちゃんとしているのです。

でも、私のように生まれた時から日本人と中国人の間にあって、
漢文を読むのも真直ぐ棒読みにするのと、
句読点をつけて逆さに読むのを同時に体験して育った上に、
20年も前から今日の中国を予言して、
中国と日本の間を行き来している人間の物の見方や捉え方と
全く同じというわけには行きません。

たとえばケ小平の「先富論」について
何回もとりあげられていますが、
経済に対する日本人の捉え方は私とは当然、同じではありません。
もともと金銭感覚に疎い日本人の中で、
そのまた金銭と縁のうすい学者にとっては縁の遠い分野のことです。
「中国人と親しくなりたかったら、お金の話をすればいい」
と私は常々言っていますが、
そのへんのところがいささか手うすです。

また靖国神社参拝の件にしても、
足を踏んだ人と踏まれた人の違いが見られます。
人の足を踏んだ人はすぐ忘れますが、
踏まれた人はいつまでも覚えているものです。
まして身内を殺された人やうちの太々のように
日本人に殺されるのを恐れて
子供の時に7年間も親を離れて広東省の田舎で亡命生活を送った人に
昔のことは忘れろというのは無理な話です。

とりわけ隋の昔から庶民の膏血を搾って生きてきた
官僚制度の欠陥を知らない日本人が
それを共産主義にすりかえて論ずるのは
トンチンカンもいいところです。
内田さんの本にそういう記述があるわけではありませんが、
本屋で何気なく手にとって大へん頼もしく思いました。


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2011年4月16日(土)

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