中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4282回
人民元の切り上げが容易でないわけ

人民元の切り上げは対中貿易で大幅赤字に陥っている国々が
等しく望んでいることですが、
輸出が困難になって産業界が大きな打撃を受けることを
怖れる中国政府は頑として拒否を続けています。
というのも金儲けのチャンスがあれば同業者はふえるし、
同業界の競争が激しくなって、
儲かる商売も儲からなくなっているからです。

同じ商売を同じ条件のもとでやっていても、
だんだん儲からなくなるのがビジネスです。
輸出だって10年も好景気が続くと、
同業者がふえるのと値下げ競争で、
中国の輸出産業はお金の儲からない所まで追いつめられています。
輸出産業の最も多い温州市で、倒産騒ぎが起り、
経営者の夜逃げや飛下り自殺がはじまったのを見てもわかります。
金が儲かるとわかれば、夜討ち朝駆け、
借金に借金を重ねて事業の拡大に精を出すのが中国商人ですから、
一旦、逆風に見舞われると、収拾ができなくなってしまうのです。

ですから人民元の切り上げをしなくとも、
産業界は輸出にブレーキがかかるところに近づいています。
但し、アメリカやヨーロッパが駄目でも、
アフリカやブラジルやインドがあるじゃないかと
中国の商人は考えます。
同じ業者にいつまでも陽が当るわけじゃありませんから、
業者も変われば、仕事の内容も変わります。
今のところ倒産まで追い込まれている業種や業者がある一方で、
新しい市場を狙った新しい輸出産業がそれをカバーしているので、
国全体で見ると貿易黒字はさして減っていないのです。

つまり国内では産業界の隆替は激しいのに、
国際的には同じ問題で悩まされているのが
今の中国の産業界と政府です。
他所の国から見れば、外国のお金を稼ぎまくっていますが、
国内で見れば、不況をまともに受けて
倒産に瀕している企業は少くないのです。
そのへんが中国当局の対応の難しいところで、
ただ一方的に頑なに拒否しているわけではありません。
中国にも中国の難しい立場があって、
本当はどうしていいのかわからないのです。


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2011年11月30日(水)

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