第7回
特許発明の特定
特許発明は、「特許請求の範囲」という書類に記載された
文言に基づいて特定されます。
発明そのものは技術的な思想とかアイデアであって、
原則、手にとって見ることができないもの
(「無体物」といいます)ですが、
特許法ではこれを言葉によって表現させるのです。
当然、解釈上の疑義が随時発生します。
例えば、権利行使時には、
特許権者はできるだけ広い範囲で主張しますし、
逆に権利を行使される側は
もっと限定的に解釈されるべきだと反論します。
では、「特許請求の範囲」に記載された発明は
どういった構成になっているのでしょうか?
日本における発明の種類は、
「物の発明」、「方法の発明」、「物を生産する方法の発明」
の三種類ありますが、物の発明の一例を見てみましょう。
A.吸引風を発生する電動送風機と、
B.塵埃を捕集する集塵手段と、
C.前記集塵手段に付着した塵埃を除塵する除塵手段とを備え、
D.前記除塵手段は前記集塵手段に
動作を加える振動板を有するとともに、
E.前記振動板は着脱自在に構成したことを特徴とする
電気掃除機 。
このように、項分け記載(A〜E)された
構成要件(又は構成要素)の集合体によって発明を特定します。
馴染みのない方にとっては、
「吸引風はどの程度の強さなのか」
「集塵手段の具体的構造はどうなっているのか」
「動作を加える振動板って???」
などなど疑問が尽きないと思います。
もちろん、各文言自体が持つ意味にも自由度がありますので、
発明の詳細な説明や図面の記載等の手助けが必要になります。
しかし、権利範囲としての発明は、
ずっと揺らぎ続ける宿命を負います
(訴訟においては激震になります)。
そんなものだと割り切って頂くよりほかありません。
ただし、構成要件が多ければ多いほど、
また各構成要件の中身が詰まっていればいるほど、
権利範囲としては逆に狭くなっていきます。
余計な限定事項が増えていくからです。
ですから、特許権を取得しようとする際には、
できる限り少ない構成要件で、
かつ、各構成要件をできる限り簡潔に記載しようとします。
あまりに簡潔に記載し過ぎると、
今度は何を言っているのか分からなくなってしまいますので、
このあたりのせめぎ合いが腕の見せ所となるわけです。
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