元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第14回
いい人がガンになる?

闘病記がたくさん出版されていますが、
内容は患者の人柄によってさまざまです。
「べ平連」(ベトナムに平和を!市民連合)の事務局長の
吉川勇一さんに「いい人はガンになる」(KSS出版)
という闘病記があります。
膀胱ガン、胃ガンの大手術にもめげずに綴った、
ユーモアに満ちた微笑ましい名著です。
ぜひ一読を薦めますが、この表題が、ガンという病気の正体に迫っていて、
じつに言い得て妙だと思いました。
裏をかえせば「悪い人はガンにならない」ともとれますから、
出版記念会も
「あなたいい人ですか」「いや、まだ悪い人です」と
和気藹々と盛りあがったと、参加した友人から聞いたことがあります。
とすると、しぶとく生還した筆者などは
「悪運」まみれの極悪人と笑われそうですね。

それはともあれ、僕の同輩、後輩を見ても、
とくにガンで亡くなった友人たちは、
気配りのこまやかな、面倒見の「いい人」が多かったような気がします。
咽頭ガンの手術の合併症で無念にも亡くなった
新聞記者のAさんの1周忌を記念して立派な追悼集が
送られてきたことがあります。
多くの友人たちからその人柄を惜しむ声で文中は満ち溢れていました。
ただ治療日誌を読んで、なんともやり切れない思いにかられました。
「経過良好で職場復帰。”やあ、実に上手くいった、
ほれぼれする手術”と医師はいっている」という記述の、
もう次ぎの日誌に「再発で入院」というクダリがあるではないですか?
いったい、人のよいAさんは
どんな惨い手術をじっとガマンしたのでしょうか?

ガン病棟のAさんとは何度もメールのやり取りをしましたが、
達筆な封書も寄せられたことがあります。

「お聞き及びかもしれませんが、再手術で舌を半分タテに割られ、
 言語不明瞭、食事は流動食のみということになりました。
 (中略)関根さんがお書きになっているとおり、
 2度の手術はガンの活躍の場を広げるだけに終わり、
 いまは手術も放射線も出来ないというところに追い込まれました。
 執刀医は親切な友人たちが探してくれた
 有名病院のそれも“名医”でした。
 いまさら後悔しても始まりませんが、
 第1歩の治療の選択にもっと慎重であったら
 どうだったのかとつい考えてしまいます」

どうでしょう。運命選択の無念の気持ちを切々と語りながらも、
最後の最後まで、周囲の人たちへの気配りを忘れない手紙と思いませんか?
こんないい人がなぜ?
Aさんが亡くなったと聞いた日、
ふと吉川勇一さんの表題を思い浮かべてしまいました。
ことガンの治療に関する限り、
「いい人」にありがちな主治医への遠慮は禁物だと僕は思っています。


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