元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第52回
密教研究家に聞いた「なぜチベットが心の故郷か?」

チベット寺院巡礼の旅といっても、
大半の参加者がちょうど息子娘世代の
若者たちだったせいでしょう。
それはしかめっ面した修業ツアーではありません。
東京や大阪から参加した若者たちは、すぐ仲良しになって、
お互いに漫画の「オバQ」「ドラえもん」を
共通体験とする世代なのでしょう。
なにせ、野原で食べるお弁当はもちろん、
ときどき車を止めての青空トイレも一緒です。
「ドラえもん」「オバQ」「のびたくん」
「ジャイアン」「シズカちゃん」
と渾名で呼び合って、ピクニックでも行くように
4輪駆動車を5台連ねての巡礼旅を楽しんでおりました。

さて、チベットの魅力にぐいぐいひき込んでくれたのは、
この道20年、チベット文化研究家として
チベット、ネパールに在住している飯田泰也さんでした。
そのガイドが素晴らしく分かりやすいのです。
この人、別に茶褐色のチベット法衣をまとった
小難しい青年僧ではありません。
それこそ、ツアーに参加した若者たちの兄貴分の世代ですから、
チベットの山野を走る車の中で、
ドラえもんや怪獣モスラの歌を大声で歌ったり、
同行した通訳のチベット女性のダジュンさんと
民謡を合唱したり、それは天真爛漫を絵に書いた青年なのです。

もちろん、宗教学者として著名な中沢新一さんも師と仰いだ
高僧ケツン・サンポ・リンポチェというお坊さんに師事し、
研究を積み重ねてきたという修養の持ち主です。
よくNHK・BSなどで
チベット番組のコーディネーターとして登場します。
古い寺院や経典の発掘のために、
命ががけでヒマラヤの奥深く分け入っている人ですから、
ちょっと観光客には頭がこんがらがりそうな
チベット密教の成り立ちや、瞑想修業の仕組みまで、
生き字引のようにスラスラと答えてくれるのです。

たとえば如来や菩薩、
恐い仁王像などが鎮座する曼荼羅仏画を見ながら、
どう密教僧たちが瞑想や解脱するか? あなたは知っていますか?
「曼荼羅とはシャンバラ、
つまり仏さまが集う理想郷を描いたものなのです。
シャングリラ、桃源郷と同じ意味です。
いわばピラミッドのような立体楼閣の理想郷をイメージして、
瞑想するわけです。
ですから、お寺で見る曼荼羅の平面絵図は
「瞑想の設計図」なのですよ」
まるで小学生を諭すような解説を聞けば、
幽玄怪奇に映る絵図の謎も、瞑想修業の秘密もたちまち解けて
聖地の旅が一段と楽しくなってきたわけです。


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2002年10月18日(金)

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