元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第391回
与謝野晶子の「産屋物語」を読んだことありますか?

産婦人科のドクハラの歴史をたどった、
メンデルソン医師の著書
「それでも医者にお産をまかせますか」
(弓場隆・訳 草思社)の話の続きです。

産婦を仰向けに寝かせる習慣は、
性的倒錯に陥っていた一人の権力者・
フランス国王・ルイ14世におもねるために
始まったという説ですが、
国王は愛妾たちの出産を密かに覗き見るのが趣味だったようです。

ところが、分娩椅子に座る座位ではよく見えない。
というわけで、男性の“産婆”というか医師たちに、
もっと見えるようにせよと命じたというのです。
かくして、女性たちは
「仰向けになって両膝を立てて大きく足を開く姿勢を
とらされることとあいなった」というわけです。

メンデルソン医師は実に皮肉っぽく
当時の医師たちは「ニュートンは間違っていた。
万有引力の法則は国王の命令で廃止された」
とでも勘違いしたのだろうか…とこき下ろしています。

そういえば、フランスの昔話を持ち出すまでもなく、
近代の女性開放の先駆者・歌人の与謝野晶子も
産屋物語(与謝野晶子評論集 岩波文庫)
というエッセイにこんなことを書いています。
「妊娠の煩(わずら)い、産の苦痛(くるしみ)、
こういう事は到底(とうてい)
男の方に解る物ではなかろうかと存じます。
女は恋をするにも命掛(いのちがけ)です。
しかし男は必ずしもそうと限りません。
よし恋の場合に男は偶(たまた)ま命掛であるとしても、
産という命掛の事件には男は何の関係(かかわり)もなく、
また何の役にも立ちません。
これは天下の婦人が遍(あまね)く負うている大役であって、
国家が大切だの、学問がどうの、
戦争がどうのと申しましても、
女が人間を生むという大役に
優(まさ)るものはなかろうと存じます」

あなたはどう思いますか?
女性患者と女性医師たちから、
ドクハラ撲滅、いや、
男医優位の医療制度のあり方が見直される時代が迫っています。
メディアがドクハラを
ただセンセーショナルな話題として取り上げるのではなく、
もう少し、構造問題としてとりあげて欲しいものだと、
この本を読んで感じたのは僕だけではないと思います。


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2003年9月22日(月)

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