元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第883回
人生は「青雲の志」だけではいけない

「愛はお互いに見つめあうことではなく、
 ともに同じ方向を見つめることである」

サンテクジュベリの名言から話を始めた
帯津医師の年頭講話の続きです
概略を抜粋します。

          *

ガンに打ち克つことは、
薬や医師に頼るだけでなく、
患者、家族、そして医療関係者が、
いっしょになって
「いのちの場のエネルギーを高める」ことが
もっとも大切なことです。

では、いのちの場を高めるにはどうすればよいか?
それは「がんに打ち克つ いのちの手帖」に載っている
サンテクジュベリの言葉ではありませんが、
同じ志に向かっている仲間と、
同じ方向を見つめあうことでしょう。

しかし、現実にはなかなか難しいものです。
私の病院のスタッフにしても、
ホリスティック医療を心から理解して、
同じ志で望んでくれる人は全部ではありません。

ある代替療法の理論家も
こんなことをいっています。
「先駆者は背中に
 すべての矢を受けて立っている人である」と。
最近では
「からだだけではなく、こころ、
 そしていのち丸ごとを診ていく」という、
私たちのホリスティック医療に理解をしてくれる人が
外にはふえてきましたが、
治療の現場では、まだまだ、
まさに「矢が背中に刺さる思いを感じつつ」
続けているわけです。

さて、先日、文芸春秋という雑誌から
「明治日本と夏目漱石」という特集の中で、
小文を書いてくれと頼まれまして、
改めて、東大在学時代のころのこと
卒業してからも同僚たちと通ったバーの思い出など、
青春の日々のことを
思い起こしながら、
漱石のいくつかの作品を読み返しました。

いい機会でしたので、
私なりに「漱石はなぜ偉いか?」
ということを考えてみました。
3つあると思いました。

1.生きる悲しみが分かっている
2.青雲の志を持っている
3.そして、これが大切なのですが、
  死後の世界を信じている――

日ごろから、私は
「人間とは悲しくてさびしいものだ」
「これ以下はない」と思えば、
そこから希望のエネルギーが湧いてくると
申しておりますが、
夏目漱石の偉さは、
ここに通じるものがあると思います。
よく、ガンの患者さんに
「前向きに明るく生きよう」と言う人がいますが、
それはありえないことでしょう。
「人間とは悲しくてさびしいものだ」と気づき、
さらに、もっと大きな宇宙の生命というものを感じたとき、
「ガンをあきらめない」
「死も恐れない」
ほんとうの生きる勇気と希望が
湧いてくるのではないかと思います。


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2005年1月26日(水)

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