元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1275回
尿潜血が出たらどうする?

前立腺、大腸、胃と多重ガンによるガン闘病歴10年――、
近刊「多重がんを克服して」で、
著者の黒川宣之さんが綴る、
手術決断までの記録は自分の闘病メモだけでなく、
個人情報保護法に基づく
「治療記録の開示」を国立がんセンターに
請求した上での闘病記録ですから、
医療データが詳しいだけではなく、
看護師日誌も適宜、引用されていて、
患者特有の微妙な心理も、ときにユーモラスに、
じつに分かりやすく整理されています。

ぜひ、前立腺ガン、大腸ガン、胃ガンで、
治療に悩んでいる人、再発転移に不安を抱いている人は、
読んで参考にするとよいと思います。

それぞれの経過について、
詳しくはこの本を読んでほしいわけですが、
たとえば、最初の尿潜血から、
手前立腺ガンの術にいたる1年2ヶ月の長い闘いは、
まさに「患者学的治療学」本ならではの
読み応えを感じさせます。

みなさんの中にも、
突然、尿潜血が出て大慌てした人はいないでしょうか?

10年前、黒川さんは「尿潜血」の原因を求めて、
膀胱、腎臓、そして前立腺と尿路系を検査していくのですが、
順天堂医大の検査で「前立腺ガン」と分かるのに、
なんと5ヶ月もかかったというのです。

それでも、めげずに、
黒川さんは、なんとしても「納得して治療を受けよう」と
しつように探索したようです。

「転移の恐れ」あればもう猶予は出来ないと、
当時としては、かなりの勇気のいることでしたが、
国立がんセンター中央病院でセカンドオピニオンを受け、
その結果、「類内膜がん」「骨点移の可能性あり」という、
順天堂医大での検査診断が、誤診らしいとわかって、
やっと、国立がんセンターで
手術を受ける決断をしたというのです。

ここまでたどり着くまで、つまり、
定期健診で尿潜血が発見されてから手術するまでに
1年2ヶ月かかったというのです。
これが、ガン後進国ニホンの実態でもあります。

さて、いまではPSA検査も活用され、
早期の前立腺ガンにはブラキセラピーという
(小線源放射線療法)が
日本でも保険適用されてきましたので、
前立腺ガンの治療も様変わりしつつあるわけですが、
「結果として転移がなかったからよかったものの、
日進月歩で進むがん治療の分野では、
一流大学病院でも
このような診断の行き過ぎや誤りがあるということが、
経験としてよく分かった。
命に関わることだから、
診断に特に疑問はなくても、
セカンドオピニオンはとったほうがよい」
と慨嘆しつつ、悔いなき治療選択のススメを強調しています。

繰り返しますが、たんなる闘病記の域に止まらず、
この10年間のガン治療の様変わりについて、
「患者学的治療学」として、
ガン後進国ニッポンの実態に警告し、
それを乗り越えてこそ
「いのちを掴める」といっているところが、
黒川さんの本の秀逸なところだと、僕は思ったわけです。


←前回記事へ

2006年2月22日(水)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ