元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1276回
ガン発病は一日でも遅く・・・

ガン闘病歴10年――、
それも、前立腺、大腸、胃と多重ガンを克服してきた、
黒川宣之の近著「多重がんに克服して」とは、
ただ、いのちを張った闘病記というだけでなく、
その10年間の体験から、
治療現場の問題を次々と洗い出し
さすがジャーナリストらしい鋭い視点から、
ガン治療後進国ニホンへの警鐘と提案が
きちんと構成されているところが凄い――
という話の続きです。

おまけに、著者の黒川さんはもちろんですが、
舌ガン克服の元国民生活センターの會田昭一郎さん、
そして、僕のインターネットによる情報収集術や
危機管理の効用についても、1章、言及しておられます。

もやは、多くの患者や家族、
誰でもが「体験的治療学」を書ける時代になってきたわけで、
これからの長寿時代のガン本とは、
いわば「患者学的治療学」本が待望されてきていると思います。

もちろん、ただ患者の愚痴や自慢話風の
闘病記があふれても困るわけですが、
黒川さんは、さすがジャーナリズムのベテランです。
ただの数奇な闘病記の域を超えて、
この長寿時代に急増する「多重ガン」の数奇な体験を通して、
日本では放射線専門医が600人、
抗ガン剤専門医が1000人たらずしかいないこと、
ガン拠点病院のない県が秋田など7つもあること――、などなど、
検査から治療、予防、治療格差にいたるまで、
ガン治療を取り巻く後進性の構造に鋭くメスを入れており、
なにが、これからの患者にとって有用か?を
冷静に問うているところが
この本の優れているところだと、僕は思ったわけです。

僕がガン養生で大事にしている諺に
「久病良医」(きゅうびょうりょうい)があります。
つまり「長患いした病院こそ優れた医師である」という意味ですが、
この個人差、症状差、年齢差が複層化してきた、
ガン猛威の時代には、
ますます、欧米の借り物医学に盲従するのではなく、
日本の患者の症例、治療例から、新たに組み立てられる、
「いのちの医学」=患者学的治療学読本が、
医学専門書とは反対極に、多く出版されるべきだと思います。

話を黒川さんの本に戻しますが、
前立腺ガン、大腸ガン、胃ガンと3つの原発ガンを患い、
前者ふたつは開腹手術、
胃ガンは内視鏡手術と選択して生き延びてきた
10年間の実体験とはすさまじいものです。

それだけではなく、検査の見落とし、誤診にはじまって、
インフォームドコンセント(医師の納得説明)、
セカンドオピニオン(第二の医師の選択)、
インターネット情報の活用法、そして治療の可否、
さらに、レセプト(医療請求書)の開示・・・と、
ガンを乗り越え、治療を選択するうえでの、
これからの「患者のあり方」と「治療のあり方」について、
鋭く問題が抉り出されております。

詳しくは、この本を読んでみてほしいわけですが、
多重ガンとの10年で痛感したこととは、
「治療技術の進歩」
「インターネット情報の変革」
「患者意識の変化」
の3点。
なんと黒川さんが出した結論とは?
「一日でも遅く発病することが最大のガン療法」だ
――ということだそうです。
まさに「患者学的治療学」の面目躍如たるところでしょう。
どんなに偉い医大の教授も外科医も
患者の魂にドスンと響くような、
こうした治療訓、いのちの処世訓を、
決して、僕たちには教えてくれることはないからです。


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2006年2月23日(木)

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