元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1610
神の手? ブラックジャック?

ガンとは、ただ治療を考えるだけではなく、
己の人生をどう再設計していくか? 
自分のこころとの闘いです。
ただ機械修理のように部品を変えたら
すべて解決というシンプルな発想では片付けられません。

長くガンと闘ってきた患者さんなら、
だんだんと「ガンの克服とは治療だけでなく
人生哲学の問題を突きつけられている」
ということをしみじみと感じてくるものです。

3年前に、筆者と同じ食道ガンにかかり、
残念にも旅立ってしまった作家の倉本四郎さんとは、
よく「ガンは、身体のみならず、
人間の生きがいというか、
精神性まで蝕むミステリアスな病気だなあ」と
お互いにメールで話し合ったものでした。
「ガンって、医学や治療の問題以上に、
哲学的な問題を投げかける、
不思議なヤツだなあ」と笑ったり、
怒ったりしたものでした。

ガンになってしまったら、
ただ不運を嘆いたり、大病院や有名医師に頼るだけでなく、
患者自らが、第2の人生設計の方針を考え、
日ごろの養生も含めて、
ひとりひとりの処世学を丸ごと再設計すべきだ――、
身体の修理のみならず、自らのこころの立脚点を、
しっかりと見直して組み替えていくことが、
ガンを乗り越える近道なのです。

なんども繰り返して書きますが、
ガンはオデキや感染症とは違う「突発性老化病」です。
体もこころも蝕む生活習慣病ですから、
マスコミで喧伝するような
「一発完治特効薬」など、いまだこの地球上に存在していません。

また、メディアのガン記事というと、
患者のための情報と謳いつつ、
大病院の有名医師たちから発信される、
手術や抗ガン剤、放射線の「自慢話的治療法」が
たくさん掲載されます。
やれ、この外科医が手術上手の「ブラックジャックだ」
「神の手だ」という記事です。

たしかに、手術や臓器移植といった、
患者を「機械並みに修理」する
医学技術の進歩は目覚しく、
心臓病や腎臓病から助かるケースも増えてきました。
しかし、ことガンに関しては医術過信は禁物です。

「神の手」や「ブラックジャック」のような医師を
クローズアップして「ガン治療は機械修理と同じだ」として、
メス捌きと化学劇薬に頼れば「一発で完治する」・・・
などなどと奇跡の医術を礼賛するような
「ガン記事」を目にしたら、
ただ鵜呑みにするのではなく、充分に注意して読みましょう。

さて、ガンは「治療技術のよしあし」のレベルだけで
片付く病気ではありません。
治療法、養生法、そして処世観の3つを
いかに患者と家族が設計していくか?
ガン治療は、まさに人生学、いや哲学的問題を、
ひとりひとりの患者に問いかけているわけです。
ガン治療とは、体を張るだけでなく、
こころも頭も柔軟に使って
いのち全体を考える人生の契機だと
思い直しましょう。
しっかりとした心の覚悟、つまり処世学が大切なのです。


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2007年1月23日(火)

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