元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1611回
「魔法の弾丸」に騙されない

テレビのワイド番組や新聞や週刊誌などで、
不安と恐怖、そして涙と美談を交えた
ガン闘病記事が増えています。
とくに季節の変わり目には
体調を崩す人が多いせいでしょう。
筆者のまわりの何人かの患者さんからも
、ガンの再発転移にどう対処したらよいのかといった
相談を貰うことが多くなっています。
しかし、ガン病棟の治療実態はどうでしょうか?

ガンと診断するとすぐにメスを振り回し、
大量の抗ガン剤を投与して、
「これで完治します」「これで順調です」と甘言を弄する――、
そして、再発や転移して、もう施す抗ガン剤がなくなると、
もっと副作用の強い「治験薬」を実験する――、
さらに治療マニュアルがなくなると「余命3ヶ月です。
緩和ケアを覚悟してください」と患者に引導を渡す――、
極端ないいまわしかも知れませんが、
いま大病院で行われている“通常医療”と称するものは、
こうしたガン患者を機械部品のように扱っては放り出す、
冷酷な治療といって言い過ぎではないと思います。
医療ミス、医療過誤といわないまでも、
ガンそのものではなく、
過酷な治療の副作用や合併症でいのちを縮めるとしたら、
患者と家族にとってこれほど悲しいことはありません。

たしかに手術や化学薬は
日進月歩の勢いで進歩しています。
多くの患者が藁にもすがる思いで
最新の治療を捜し求めます。
いっとき、手術や化学薬で症状が改善されることがあります。
しかし、大抵の患者が激しい副作用や
後遺症、さらに再発と転移の不安のなかで、
入退院を繰り返す日々となります。

はじめは気がつかなくても、
やがて、この世の中に「一発完治の特効薬」や
「神ワザの手術」などないことに、
多くの患者と家族が気づくわけです。

たとえば、抗ガン剤が効いたというと
「ガンが治った」と思われがちですが、
これは大きな間違いです。
抗ガン剤の「奏功」とは、
100人に20人以上についてガン腫瘍が半分に縮小し、
この状態が4週間以上続くことを意味します。
5人に一人にこの効果があれば認証されているのです。

また、製薬会社のホームページを見れば分かりますが
シスプラチンとか、ジェムザールなど、
いわゆる抗ガン剤は、
標準商品分類では「毒薬」に分類されていますが、
こうしたことは患者に手渡される
処方箋にも書かれていませんし、
「抗ガン剤=魔法の弾丸」情報を流す、
マスメディアの記事では、めったに触れられていません。

たしかに、大病院には手先の器用な
ブラックジャックという名医もいるでしょう。
神の手と呼ばれる、
手術回数の多い医師もいるでしょう。
ネズミの実験で効果の出た「魔法の弾丸」
と呼ばれる抗ガン剤もあるでしょう。

しかし、よく西洋医学サイドからは、
東洋医学や代替療法をエビデンス(実証性)のない、
迷信のような医学だと指弾しますが、
近代西洋医学にも偏狭な迷信まがいの話が
たくさん潜んでいるわけです。


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2007年1月24日(水)

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